【SDGS 6:安全な水とトイレを世界中に】指導アイディア展開案ー日本の水資源編

対象:小学校高学年

指導案作成・授業者/松本晃

大阪府公立小学校教諭

編集委員/山口日出夏

(環境政策学博士 環境教育NPO・Blueggs Environmental Education代表 『小5 算数・社会・理科でSDGsがわかる!考える力をきたえるワーク』著者)

編集委員/岡本健

(公益財団法人)海外子女教育振興財団(JOES)教育アドバイザー 大阪府公立小学校・オハイオ州コロンバス補習授業校元校長)

 

1. テーマ設定に関わる社会的な背景

2. 授業の目標

3. 授業の様子のまとめ

4. 展開案

5. 板書

6. 授業で使用した教材(プリント)

水はわたしたちの生存に不可欠である。しかし、地球上では水が平等に配分されていない。世界を見渡すと、安全でない川や井戸の水を飲み水として使用している人が4億人いる。上水道が完備されていない人は21億人にも上る。また、利用できる水が不足しているためにトイレを設置できず、野外排泄を余儀なくされている人は3億5000万人にのぼる。こうした汚れた水や不衛生な環境が原因で、毎日800人以上以上の子どもたちが命を落としている。そして、世界の水環境は地球温暖化や人口増加などの影響により、今後さらに悪化すると予測されている。世界気象機関(WMO)によると、2050年には50億人が水不足に陥るといわれている。

(数値は、2026年2月18日時点で公表されているデータに基づく)

日本の慣用句に「湯水のように」という表現がある。「湯水のようにお金を使う」とは、お湯や水を使うようにムダづかいをすることを指す。このような表現にもあるように、ムダに使えるほど日本は水に恵まれているというイメージを持たれがちである。実際、日本は降水量が多く、梅雨や台風があり、冬には雪が降る地域もあるため、降水量は世界平均の1.5倍に達する。しかし、日本は国土の地形上、短く急な川が多いため、降った雨の多くが国内にとどまらず海へ流れ出てしまう。その結果、一人あたりが利用できる水資源の量は世界平均の半分程度にとどまり、実際には無駄遣いできるほど水が豊富なわけではないのが現状である。

このような背景を踏まえ、SDGsの6番目の目標「安全な水とトイレを世界中に」のもと、水資源のあり方を見直すことが求められている。水消費の削減や水質改善への取り組みは、今まさに急務である。

1.日本の水資源は他の国と比べて多くはないことを理解する (知識・技能)

2.社会の課題を読み解き、実践的に考える力を身につけられるようにする (思考・判断・表現)

3.我が国の水資源やこれからの持続可能な社会について自分なりの考えを持てるようにする(主体的に学習に取り組む態度)

【関連している算数社会科・理科の単元】

算数:平均 / 分数と小数・整数の関係 (小5)

社会科:わたしたちの国土(国土の地形と特色)(小5)

理科:流れる水の働きと土地の変化 (小5)

大阪府内の小学校6年生のクラスにおいて、『小5 算数・社会・理科でSDGsがわかる!考える力をきたえるワーク』を用いたSDGsの授業が実施されました。テーマは「わたしたちの生活と水資源」。松本教諭の指導のもと、 子どもたちは明るい教室で活発に意見を交わしながら、日本の水資源の現状や課題について主体的に考えました。その授業の様子をお伝えします。(授業日:2025年12月19日)

場面1:導入

場面2:データを見て考える

場面3:算数の力を使ってデータを読み解く

場面4:補足資料を使って日本の使える水の量が少ない理由を考える

場面5:水資源を守るために自分にできることを考える

子どたちがふり返りに書いた授業の感想

指導者の所感

【場面1】導入

指導者:(ペットボトルを取り出し)今日のテーマはこれです。

指導者:ペットボトルじゃなくて(笑)水です。SDGs6に「安全な水とトイレを世界中に」がありますが、今日はこの水について、みんなと考えていきたいと思います。

指導者:まずみんなに一つ目の質問。「日本は水が豊かな国だろうか?」

指導者:みんなでお話ししてみて。

指導者:どんな意見がでましたか?

指導者:みんなの意見はおおかた、他の国と比べて豊かな方って感じなのなのかな?

【場面2】データ(グラフ)を見て考える

指導者:さて今日は、国別の1ヶ月あたりの降水量のグラフを用意しました。さっき「他の国と比べて」という話が出ましたが、日本、アメリカ、カナダ、中国、フランスの5つの国がここに当てはまります。さて日本はどこでしょうか?

生徒たちは各々国の名前をいい、答えを当てるのに夢中になっていました

指導者:じゃぁ一番降水量が少ないところから行こうか。

指導者:カナダでした。

「よっしゃぁ〜!」予想が的中し思わずジャンプ

指導者:次少ないのが中国、そしてアメリカ、フランス、そして(一番多いのが)日本でした。

指導者:日本は、他の国と比べて降水量が多い、つまりたくさん雨が降るってことですね。

指導者:では次。次は「1分あたりに使える水の量」のグラフです。

指導者:1分間でどれだけの水が使えるか、単位は億リットルです。また国を当ててください。

ここでも生徒たちは国の名前を当てるのにとても積極的に発言していました

指導者:一番少ないのから行こっか。

指導者:一番少ないのはフランス。

指導者:では次少ないのは?

指導者:日本なんですね。

日本の少なさにショックを受けているよう

指導者:みんなこのグラフ見てどう思います?

指導者:日本は降水量は多い、でも使える水の量は少ない。

【場面3】算数の力を使ってデータ(グラフ)を読み解く

指導者:(左のグラフを指し)みんなは日本は降水量が多いって言ったけど、この5カ国と比べてどれだけ多いですか?

指導者:そうだね、何と比べたらいいかな?こういう時、算数でなんか便利なものあったよね?

指導者:そうだね、平均を出したら他の国と比べてどうかなって比べやすかったね。

平均の求め方が書かれた先生のオリジナルポスター

指導者:では、それぞれの平均を出して、日本と比べてどうかっていうのを考えていきましょう。

【プリントの配布】

【各々が問題を解き始める。黒板のタイマーを4分間にセット、そして2分延長】

クラスは静まりみな集中して問題を解く

指導者:ではみんなでやっていきましょう。計算ややこしかったね。

【降水量の平均の求め方を指導していきます】

指導者:5カ国の平均が74mmで、日本は139mmだった。日本はどんだけ多かった?

指導者:では次。

【1分間あたりに使える水の量の平均の求め方を指導していきます】

指導者:そしたら日本は、平均と比べてどれだけ少ない?

指導者:ということでした。こうやって平均出して比べるとわかりやすいですね。

指導者:(ペットボトルを持ち上げ)例えばこれが世界の平均の降水量だとしたら、

指導者:日本はこんだけ降る。

指導者:で、世界がこんだけ水が使えるとしたら、

指導者:日本の使える水はこんだけ。

指導者:日本はこんだけ降って(青)、こんだけ使える(緑)。

【場面4】補足資料を使って日本の使える水の量が少ない理由を考える

指導者:じゃぁもう一回聞きます。日本は水が豊かな国ですか?

指導者:そうですね、何でこんなことが起きるのでしょうか?次の問題③に関係していますが、なんでこんなことが起きるのか、考えてみましょう。そしてこれはみんな社会で学習したことをよく思い出してください。

指導者:ちょっとよくわかりません、という人は、タブレットにヒントになる資料を載せています。資料3つ載ってます。日本の地形と川の特徴と雨の降り方と。それを見ながらちょっと考えてみてください。自分で考えるって人はタブレット見なくて大丈夫です。

タブレットに準備した3つの資料

【タイマーを4分間にセット】

タブレットを見ながら各々考えています

指導者:ちょっと全員で交流してみましょう。

【タイマーを2分間にセット】交流タイム

全員が立ち上がり複数のグループができ資料を元に話し合っています

指導者:みんな席に戻ってください。じゃぁ日本は何で降水量が多いのに使える水が少ない、ということが起きるのでしょうか?

指導者:いいですね、雨降っても、川の流れが急で短かったらすぐ海に流れちゃうね。

指導者:他どうですか?

指導者:これについてどう思いますか?

指導者:雨って地面に降ったらどうなるの?

指導者:そうだよね、でもこんだけ一気に降ったらどうなると思いますか?

指導者:そうだね、地中にしみ込めない、で結局は流れ出ちゃう。

指導者:資料3から、日本は集中豪雨が多いことがわかって、雨が一気に降ることが多くて、一気に大量に雨が降ってしまうと、地中に水を蓄えることができないことがわかりました。

指導者:社会だけでなく理科の知識も出てきましたね。

指導者:ということで日本はたくさん雨が降るけど、使える水は少ない理由わかった?

【場面5】水資源を守るために自分にできることを考える

指導者:じゃあ、日本でこれからも安心して水を使い続けられるようにするために、自分たちができることって何なのかな?

指導者:日本の川を長くするって難しそうやな。雨をコントロールすることも難しそうやな。

指導者:ほんなら、この限られたこの水をみんなで分けないといけませんね。じゃぁどんなことができるかな?

指導者:ここに家庭の水の使用量の資料があります。この表を見ると、歯磨きの時、30秒間流しっぱなしにしたら6Lの水を使い、手洗いの時に1分間水を出しっぱなしにしたら12Lの水を使うとあります。みんな、お風呂入ったり、トイレ使ったり、食事したり、洗濯したり、いろいろなところで水を使いますよね。このあたりで自分たちにできることって何かないかな?

モニター上の資料

指導者:水を大切に使うってそれはそうなんだけども、具体的に自分にできることをちょっと考えてみたいと思います。

指導者:プリントに、具体的に自分にできることを考えて書いてみましょう。

【タイマーを4分間セット】プリントに自分にできることを考えて書く

指導者:具体的に自分にできることが書けているといいです。ではちょっと班で話ししてください。

【班で話し合い】

指導者:では前を向いてください。では今の自分たちにできることにどんなことがありますか?

以下は、子どもたちがプリントに書いたこと

指導者:最初、みんな、日本は水が豊かな国じゃないかなって思っていたよね。実は、このグラフ見るまでは先生もそう思っていた。だって、水いっぱい使えるやん。蛇口ひねったら、水、出てくるやん。だから、改めて考えると、あんまり水を大切にしてなかったなぁと。いっぱい使えちゃうから。当たり前すぎて、あんまり大切に使ってなかったな、と。

指導者:でもこうやってみんなと勉強していくと、やっぱり水は限られた量なんやなぁということがわかりますよね。具体的に限られた量なんやなぁと知るとこれから変わってくることがあるかと思います。やっぱり大切にせなあかんなと。今は良くてもね、これから先のことを考えた時にみんなの行動一つ一つで未来が変わってくるのかなと思います。やっぱり知ることって大事だよね。これをまた誰かに広めていったりとか、意識して守れる人が増えていくとまた未来が変わっていくのかなと先生は思いました。

指導者:じゃぁ最後、ふり返りを書いてください。

子どたちがふり返りに書いた授業の感想

・日本は水は豊かな国だと思っていたけど、この授業をして、そこまで豊かではないこと

が分かった。自分も水を大事に使わないといけないと思った。

・全然気にしていなかった!流しっぱなしだと地球によくない。お金も使うからいいとこ

ろはまったくない。デメリットだらけ!

・きちんと節約しようと思いました。グラフの中で、一番降水量が多いのに、使える水の

量が少ないと聞いてびっくりした。

・日本は水が豊かではないのが意外でした。

・このグラフを見るまであまり何も考えずに水をたくさん使っていたけど、今日の勉強で

水はとても大切なものだとわかった。

・節水は、日本のためにも家庭のためにもなる。

・グラフを見るまでは日本は水が豊かだと思っていた。だけど、③④などを書いているう

ちに、 日本の水は豊かではないと知ったので、 これからはちょっとでも節約しようと思う。

・豊かだと思っていた日本ですら8億リットルだったら、もっと水やトイレのない所はど

れだけ苦しい思いをしているのか知りたい。

・水を当たり前のように使っていたけど、むだにしないために、水の節約を心がけようと

思った。

・限りある日本の水をできるだけ大切にしたいなと思いました。

・日本は、急な雨はたくわえることができないのと、川の流れが急で短いから、使える水

の量が少ないことがわかった。

・お風呂で使う水の量が一番多いことがわかったから、お風呂は特に節水をしたいと思っ

た。

・水が蛇口をひねるとすぐに出てくることのありがたさを知った。

指導者による所感

子どもたちは、「食品をむだにしてはいけない」「水は大切に使わないといけない」ということは一定分かっていると思います。
しかし、分かってはいるものの、日々の生活でそのことを意識し続けたり、継続して何かに取り組んだりすることには、難しさがあるのではないかと感じています。どこか他人事である子どもたちの意識を、現状を知ることで自分事として捉えることができるようにし、今の自分にできることを具体的に考えていくことが大切だと考えています。今回ワークを使うことで、子どもたちの意識に変容がみられたように思います。
ワークにある具体的な数値やグラフなどの数量は子供たちにとってイメージしやすいのかなと思いました。実感を伴った理解は、何を学ぶにおいても大切な視点だと思っています。

5年生は年間を通して「未来のために、今の自分にできること」を考えています。これからも、子どもたちとともに、私たちにできることを考え続けていきたいと思います。

松本教諭の指導案(ここでは略案)を掲載します。

【1時間用】

【1時間用】

松本教諭が実際に授業で使用したプリントを掲載します。

上のプリントはワークのこのページ↓が元になっています。

『算数•社会•理科でSDGsがわかる!考える力をきたえるワーク』

タブレットでの学習や、教室でモニターに映すのに適したフォーマットになっています。

こちら>よりご利用ください

他の指導アイディアをご覧になりたい方は→こちらよりご覧ください

授業の展開案はこのワークを元に作成されています

牛山泉名誉教授(日本の風力発電の父/足利大学前理事・名誉教授)

この「算数・社会・理科でSDGsがわかる!考える力をきたえるワーク」は、皆さんの身の回りの社会の様々な問題を算数や社会あるいは理科の力を借りてわかり易く整理し、皆さんの考える力を引きだしてくれるように工夫されています。どれも最新のトピックスで私も「そうか、知らなかったな」とか「なるほど、そうなのか」と思わされ、クイズ感覚で納得すると同時に新たな好奇心も掻き立てられてきました。

岡本 健先生(海外子女教育振興財団 教育アドバイザー/米オハイオ州コロンバス補習授業校元校長)

ワークに取り組むと、生活を見つめ直し、自分に出来ることを考える行動化に繋がることが期待できます。例えば、地球温暖化は、異常気象、電力逼迫、農作物の不作等、ニュースで見聞きする事をワークの問題を解きながら、数値を導き出したり、表やグラフを読み取ったりして実感を伴った、より切実な自分事として認識されます。社会・世界と関わる一歩となることが、このワークの価値であり、魅力です。

(大阪府内の小学校教諭)

すべての問題に、指導ガイドと解説動画が用意されていて、教職経験の浅い教員にもベテラン教員にもお勧めです。指導ガイドには、個々の教科のねらい、SDGsや教科横断の目標が書かれ、授業形式で問題に取り組むことができ、補足の説明や参考資料は、学習集団の知的興味をより高めながら、学習のゴールに到達できるようになっています。解説動画は、学校での一斉指導や、宿題、オンライン学習に活用できます。多彩な学習形態&多様な学習活動を効率よく展開できる教材です。

(神奈川県内の小学校教諭)

問題は見開き1ページになっていて、何をどれだけやればいいか子どもも教師も見通しをもちやすい。そして、すべて今日的な教育課題が取り上げられ、次代を担う子どもたちには不可欠なテーマばかりです。また、答えを導き出すのに四則計算の力だけでなく、問題文と様々な表やグラフなどの資料を読み解く力が必要です。全国学力・学習状況調査でも指摘されている資料活用能力が身につき、学力の三要素が育まれることが期待できます。

(米インディアナ州の補習校教諭)

算数、理科、社会とSDGsを教科横断的な観点から学習できる教材になっており、日本の自然環境、工業生産、環境問題について分かりやすく学習できます。充実した解説と指導ガイドがあり、教師も子どもたちも使いやすい教材になっています。練習問題では、データや図から読み取る問題があり、子どもたちの計算力、資料を読み取る力を育むことができます。単元ごとに解説動画がついており、興味のある単元をご家庭でも学習できるので、子どもたちの主体的な学習にも期待できます。

学校や図書館でのご利用を考えている方はぜひご連絡ください。献本いたします。

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