はじめに

本書の目的

1990年代以降のIT革命により、大量の情報の伝達と蓄積が可能となり、高度情報化(あるいは情報過多)社会と呼ばれる時代に突入しました。そして現下、自動運転やスマートホームなど、AIやIoTの社会実装が進み、社会の多分野で、不可避的な構造変動が急速に進展しています。

AIが人間の知能を超えるであろうと予測される、2045年のシンギュラリティの到来を目前にして、この急激で予測不能な変動の時代を生きていく今のこどもたちに求められるのは、従来とは異なった能力、つまりは従来の暗記重視の知識習得だけでなく、物事の本質を見極め、現実に直面する問題を鋭く見つけ出す洞察力や分析力、常識を疑う批判的思考力、問題解決のための論理的思考、といった多面的な「考える力」が求められることになります。

教育の現場も、この急速な社会の変化に対応すべく、知識蓄積型から思考力を重視する教育方法にシフトしています。今年の一月を最後に、センター試験が知識偏重として廃止され、学校でも教科を横断する授業や、情報活用力を育てる教科が取り入れられたりと、判断力・表現力とともに、こどもたちの思考力、つまりは「考える力」の育成が、最重要課題になっています。

『算数で考えるかんきょう問題』は、「環境問題にまつわる生の最新データ・情報を使って考える力を育てる」、という新しいアプローチによって、算数科と社会科の教科の横断を試み、こどもたちの1)考える力の礎となる算数の力を磨き、2)環境・社会の現状を読み解く力を育て、3)実践的に「考える力」の育成を促すことを目的としています。

現在進行形の新型コロナウイルスの感染拡大は、今のこどもたちが成長していくこれからの時代は、より一層、不確実性を抱えた社会になることを強く示唆しています。この本を使うことが、こどもたちが新時代を生き抜くための必要不可欠な能力を習得する手助けとなることを強く願っています。

 

2020年夏

Blueggs Environmental Education 代表

山口日出夏