はじめに

本書の目的

AIが人間の知能を超えるであろうと予測される、シンギュラリティの到来は目前と言われています。この急激で予測不能な変動の時代を生きていく今のこどもたちには、

1.物事の本質を見極め、現実に直面する問題を鋭く見つけ出す洞察力や分析力
2.常識を疑う批判的思考力
3.問題解決のための論理的思考力

といった多面的に「考える力」が求められるようになります。

教育の現場も、この急速な社会の変化に対応すべく、知識蓄積型から思考力を重視する教育方法にシフトしています。2020年の1月を最後に、センター試験が知識偏重として廃止されたり、小学校でも教科を横断する授業や、情報活用力を育てる教科が取り入れられたりと、判断力・表現力とともに、こどもたちの思考力、つまりは「考える力」の育成が、最重要課題となっています。

『算数で考えるかんきょう問題』は、「環境問題にまつわる生の最新データ・情報を使って考える力を育てる」、という新しいアプローチによって、算数科と社会科の教科の横断を試み、こどもたちの1)考える力の礎となる算数の知識と技能を活用して問題を解決する力を磨き、2)環境・社会の現状を読み解く力を育て、3)実践的に「考える力」の育成を促すことを目的としています。

現在進行形の新型コロナウイルスの感染拡大は、今のこどもたちが成長していくこれからの時代は、より一層、不確実性を抱えた社会になることを強く示唆しています。本書の活用が、こどもたちにとって、時代を生き抜くための必要不可欠な能力を獲得する一助となることを強く願っています。

2021年夏

Blueggs Environmental Education 代表

山口日出夏