サクラRADIO シリーズ「SDGsについて考えよう」

全米の地域に根ざした情報発信を目指す唯一の日本語インターネットラジオである「サクラRADIO」によるシリーズ「知識ゼロからのSDGs入門」に隔月で出演中です。ポッドキャスト形式でも配信されています。ぜひお聞きください。
第1回目 SDGsの生まれた経緯 (2023年6月5日放送)
第2回目 これまでのSDGs達成度 (2023年8月7日放送)
第4回目 ジェンダー平等について(2023年12月11日放送)
第7回目 プラスチック問題について(2024年6月3日放送)
第8回 食品ロス問題について(2024年9月23日放送)
第9回 住み続けられるまちと南海トラフ地震について(2024年10月7日放送)
第10回 教育について (2024年12月2日放送)
第一回目
2023年6月5日放送分
SDGsってどうやって生まれたの?昆虫食べるってSDGs!?
書き起こし
青字:ナビゲーター 井口由美
黒字:ゲスト 山口日出夏
シリーズ「知識ゼロからのSDGs入門」ナビゲーターの井口由美です。この新シリーズではゲストにSDGs教育のNPOブルーエッグス代表である山口日出夏さんをお呼びして、アメリカや日本や世界のSDGsについてお話を伺っていく予定です。
はじめまして山口日出夏と申します。
私は2016年にインディアナ州のエバンスビルというところでブルーエッグスいうNPOを設立してSDGs教育を進める活動をしております。今日はさくらラジオさんでSDGsの話をさせていただけるとのことで楽しみにして参りました。今日はどうぞよろしくお願いします。
ところでまずSDGsってどうやってできたのでしょうか?
SDGsは日本ではなんかブームのようになっているので、突然、ポンと出てきたもののように見える方もいらっしゃるかと思いますが、実はSDGsはMDGsという今から 20年以上前の2000年にできた「ミレニアム開発目標」というのがもとになっています。
MDGsができたのは、1990年代の世界情勢が影響しています。1990年台は、米ソの冷戦が終結したことにより、それまで抑えられていた民族間や宗教間の「不満」が噴出して、多くの国で血が流れた10年になり、紛争により難民問題も深刻化した10年になったんです。
そして1990年代はおよそ20億人の人が、一日200円以下という極度に貧しい生活していました。そのころの世界の人口は55億人ほどでしたので、世界の三人に1人がそういう生活をしていたことになります。(現在は7億人強、十人に1人)そしてそのほとんどの人は開発途上国に住んでいました。そして途上国は、こういった極度の貧困の他にも飢餓や健康不良、教育を受けられないといった問題をたくさん抱えていました。
そういった、途上国が抱える問題を解決するための3つのテーマ「2度と戦争をしない」、「飢餓から人々を救う」、そして「人々が生まれながらに持つ可能性をつまない」、(平和)(開発)(人権)のこの3つのテーマを中心に「2015年までに達成させたい」8つ目標が2000年に掲げられました。それがMDGs、ミレニアム開発目標です。
この目標が設定されて、目標達成のためにさまざまな努力がされたことで、極度の貧困に暮らす人の数は約半分に減って、途上国内の問題に大きな改善が見られました。
しかし、残念ながらMDGsで掲げた目標の全てを解決することはできなかったんですね。そしてMDGsの目標を達成しようと奮闘していた2000年以降、途上国での問題以外にも、先進国でも問題があり、そしてグローバル化で一国では対処できない問題が顕在化し、他にも二酸化炭素の排出量が1990年から50%以上増加して地球温暖化問題も深刻化していったんですね。その中で、「この世界の私たちが抱えている問題は全てつながっているのではないか」という考え方が生まれきて、平和、開発、人権、地球環境の全てつなげた統合的な対策が必要なんじゃないかとされていきます。そうした大きな流れの中で2015年にSDGs、「持続可能な開発目標」が生まれたというわけです。
SDGsは17個の目標、169このターゲット、231このグローバル指標、とこの中にはたくさん詰め込まれていて、ちょっとみただけで、たくさんありすぎて面食らっちゃう感じなんですが、究極のところ、SDGsには「2030年までになっていたい世界の姿」「子供たちや次の世代に引き継いでいきたい世界」が描かれている、と考えるとわかりやすいと思います。
「貧困や飢餓がなく、みんなが健康で教育を受けられて、暴力や差別がなく平和で公平で、クリーンで安全なエネルギーや水を使えて、働きがいのある仕事につけて、ジェンダーギャップがなくて、生き物や自然が守られている」そんな世界がSDGsが描く「子供たちや次の世代に引き継いでいきたい2030年までになっていたい世界の姿」であって、そいういった世界をこれからみんなで作っていくために、世界のみんながどうしたらいいのかを、17の目標に分けて書きしめしている、ということがいえます。
山口さんはSDGsの教材をつくられているとか?
はいそうなんです、小学校の中学年や高学年用に、英語と日本語でのSDGsの教材を作っています。去年出版したのが「算数社会理科でSDGsがわかる!考える力をきたえるワーク」というワークブック形式の教材なんですが、学校の教科書で学んだことを使って学力を高めながら、SDGsについて考えて、考える力も鍛えようというコンセプトをもとに作っています。そして、最近、Youtube動画も始めまして、「一日1問SDGsを考えよう」というチャンネルでこの3月から配信を始めています。
例えばなんですが、CESという世界最大規模のハイテク技術の見本市が毎年1月にラスベガスで開催されるんですが、ご存知ですか?
今年のCESでは、NYのスタートアップ企業が開発したウォーターサーバーが注目されたんですが、このウォーターサーバー、なんと空気から一日10Lの飲み水が作れちゃうみたいでちょっとすごくないですか。人間は大体一日2〜3リットル水を飲むのがいいと言われてるので、四人家族だったら十分な量の水をこのマシンで空気から作れちゃう。なんかちょっと魔法みたいじゃないですか?
このウォーターサーバーはイノベーションアワードも受賞したんですが、実は「結露」の原理を使って空気から水を作り出しています。
では井口さん、ここで問題です!
結露の現象はどっちでしょうか?
1)加湿器を使うと部屋の湿度が上がる 2)氷水を入れたガラスのコップが濡れる
答えは2です。
このウォーターサーバーはこういった氷水を入れたコップにつくような水をどんどん作って一日10Lもの水を作れるってことなんですよね。こういったイノベーションは、現在世界で起きている水不足問題の解決に大きく関係していてまさにSDGs関連のイノベーションなんです。
こういったことを題材にして教材を作って、例えばこのウォーターサーバーの例では、四年生の理科で学習する「結露」の原理とSDGsの6番目の目標の水不足問題を結びつけて、総合的に学力と考える力を育てられるような教材づくりを目指しています。
この題材をSDGsクイズにした動画↓
こういうった教材をつくる原動力はなんですか
私は知識があれば行動が変わると信じているんです。
例えば、最近、コオロギとかの昆虫のパウダーが食品として売られているのをみたことありませんか?
これは実は、私たちが牛とか豚とかの動物を食べ続けていると環境がもぅもたなくなっちゃう、ということから発しているんです。こういった家畜は育てるのには環境に負荷がすごくかかるんです。だからプロテインは牛肉からじゃなくって、育てるのに環境負荷が小さくて栄養もたくさんある昆虫からも取ろうってことで、ヨーロッパがコオロギとか昆虫を食用として認可し始めたのが発端になっています。
こういったことで日本のことも調べてみたんですが、実は日本でも昔から、かいこやイナゴ、蜂の子など昆虫を食べる文化があるんですよね。日本では平安時代にはイナゴが「薬」として食べられていたみたいで、江戸時代にはイナゴをクシにさして蒲焼にして食べていたそうで、イナゴの蒲焼は夏の風物詩でもあったそうです。そして大正時代には55種類もの昆虫を食べていたそうです。
そして昆虫を食べる理由として、イナゴなんかは、米作りの害虫となるので、大発生する前にとって食べちゃってついでにイナゴから栄養分もとる、蜂の子も、山に入る時に危険なスズメバチを駆除すると同時に、蜂に含まれる栄養をちゃんと体に取り入れる、と日本での昆虫食はとまさにサステイナブルな文化だったんです。
今では昆虫は食べ慣れないものになっているので、「え〜昆虫食べんの?」ってなるかともしれませんが、実際私も、イナゴの佃煮が興味があってインターネットで写真を見てみたんですが、足とかもそのままの形で色だけが茶色くなってご飯の上に3匹乗って、醤油と砂糖で煮込んで甘口って書いてあったんですが、ん〜食べれるかなぁ!?とちょっと尻込んじゃったんですけど、
昔、マクドナルドの肉にミミズが入っているとよく噂になっていましたが、これからはそんなのが当たり前、逆にミミズ入りが「栄養満点なサステナブルなバーガー」みたいになるかもしれないですね。
昆虫を「積極的に」食べるか食べないかは別にしても、こういった知識があれば、大豆でできたインポシブルバーガー、試してみよっかな、とか私はお肉大好きな肉食ですが、インポシブルバーガー好きです、大根おろしのせてポン酢かけて食べると美味しいです。食事で牛肉食べてて、残すのはやっぱダメかな、意識が変わって行動も変わると思うんです。
そしてやっぱり、これからの子供たちはいろいろと正解がない世界に生きていくことになるので、土台となる学力をしっかりつけて考える力を鍛えていってほしいというのが教材を作る原動力になっています。
他にもローカルで文房具のリサイクル活動もされているとか?
ローカルでは近所の小学校から使用済みの文房具を集めてリサイクル活動を行ったりもしています。毎年かなりの量が集まるのですが、集まったほとんどのものは新品だったりまだ使えるものだったりするので、文具を必要としている学校や先生にドーネーションしてリユーズしてもらっています。また折れたクレヨンとかは溶かして動物とかハートとかの形にしたクレヨンにアップサイクルして商品にしています。例えばハロウィンの季節には、トリックオアトリートに配れるようなジャックオーランタンの形のクレヨンをつくってローカルで売って、その収益をローカルの学校に寄付することで地域の学校活動をサポートしています。



第二回目
2023年8月7日放送分
SDGs現状報告 世界はSDGsをどれくらい達成できてるの?日本とアメリカ、どっちがSDGsのランキング高い?コロナワクチンとSDGsの関係って?
書き起こし
青字:ナビゲーター 井口由美
黒字:ゲスト 山口日出夏
今世界はSDGs的にどこにいるのでしょうか?
SDGsの進み具合を調べた評価報告Sustainable Development report2022によると、わたしたちの世界のSDGsの達成度は100点満点中いまは66点だそうです。コロナや、ロシアのウクライナ侵攻(しんこう)によって、2019年以降SDGsの進捗は止まっていて、このままいくと2030年までにSDGsを達成するには難しい状況になっているそうです。
このレポートは世界各国のSDGsの達成度を数値化してランキングも出しているんですが、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、オーストリア、ドイツ、フランス、スイス、と北欧をはじめとするヨーロッパ勢が上位を占めています。
日本は100点満点中約80点(79.58)で19位、アメリカは約75点(74.55)で41位でした。ちなみにSDGs達成度一位はフィンランドで86点(86.51)でした。
日本がSDGs的に評価が高いところは、たくさんあるんですが、日本に住む人たちが、電気やガス、水、インターネット、公共交通機関などの日常生活に必要な生活インフラを安全に利用できていること、飢餓や貧困に苦しむ人が少ないこと、健康で長生きできる人が多いこと、ほとんどの人が教育をうけらること、森林が守られて森林破壊がないこと、安全で平和に暮らせることなどがあります。
反対に、日本のSDGsの達成度が低いところは、二酸化炭素排出量の多いところや、再エネの量が少ないところ、男女間の賃金の差が大きいところ、数が減っている魚がしっかり保護されていないところ、国内で処理しきれなくなっているプラスチックゴミが海外に輸出されていてその量が多いところなどが挙げられます。
アメリカのSDGsの評価の低いところは、妊婦の死亡率がOECDの平均と比べて3倍も高かったり、肥満率が高い、所得格差が大きい、殺人が多い、そして日本と同じで二酸化炭素排出量が多く再エネ率が低いことなどが挙げられます
実はアメリカのSDGs達成度は先ほど41位と言いましたが、先進国と呼ばれている国の中ではこのランキングは最下位に近いのですが、その理由の一つに国がリーダーシップを発揮できていないことが関係していています。
井口さん、SDGsとか日頃、目にしたり聞いたりします?
あまり聞かないんですよね
そうですよね、日本に去年帰った友達が、日本はそこらじゅうSDGsでびっくりした〜とラインをくれたのですが、ここに住んでてSDGsってあまり目にしませんよね。
私には高校生の娘と息子がいるんですが、特にミッドウェストという地域性にも関係していると思いますが、学校でもSDGsが話題にもならないみたいで、先日、ここの小学校の校長先生にも確認したのですが、やっぱりインディアナ州からSDGs教育を進める「おったし」はないみたいで、小学校でもSDGsは教えていないといっていました。
ある調査によると日本の認知率は9割と広く認知されているのに対して、アメリカではSDGsを認知している人は半分に満たない状態だそうです。多分ここら辺を調査したら認知度は確実に半分以下だろうな〜というのが私の感覚ですが、こういったことからも想像できるかもしれませんが、アメリカのSDGsを達成させようというコミットメントは、実は「世界最下位」で、SDGs達成への協力度がとても低いことが問題になっています。
日本はSDGsが2015年に成立してから「SDGs推進本部」を内閣に設置してSDGs進めようとしていますが、アメリカの内閣にはSDGsの部署はありません。
そして各国でどのようにSDGsが進んでいるかを知るために、国連は全国にVNR(a Voluntary National Review (VNR))というSDGsの進捗状態を記したレポートの任意提出を国ごとに求めているのですが、アメリカは今まで一回もレポートの提出をしていません。ちなみに日本は2017年と21年に2回提出しています。
そして日本にはSDGsに国家予算がついていますが、アメリカではついていません。バイデンのホワイトハウスからの発表でもSDGsの表記を見ることが少ないですし、こういったことからもアメリカが、SDGsという枠組みのもとで世界と協力してSDGsを達成させようとするコミットメントが低いというのがわかるかと思います。
反対に、国のSDGsのリーターシップが弱いその代わりに、これもアメリカらしいのですが、州や自治体が主導となってSDGsを達成させようという動きが見られています。SDGsの動きが活発なのは、ハワイやロサンゼルス、ニューヨークシティー、ピッツバーグ,フロリダのオーランドなどで、こういった州や自治体は、国が提出しない代わりに、各自でSDGsの進捗状態を測って国連にレポートを提出したりもしています。
こういうふうに州や自治体の意向によってSDGsが進められていたりされていなかったりするので、アメリカ全体としては足並みはそろっていない状態で、州や自治体によって大きな差が生じているのが現状だと言えます。
SDGsの達成度が高い州はバーモント州(達成度60%)マサチューセッツ、ワシントン州などで、反対に遅れているのがアラバマ。オクラホマ、アーカンソー、ルイジアナ、ウェストバージニア、Mississippi州と「サウス」と言われている州が多くなっています。
そしてあるレポートを読んでいて興味深いなと思ったんですが、SDGsが進んでいる州はコロナのワクチンの摂取率が高くて、反対にSDGsが遅れているところはワクチンの摂取率がすごく低いと相関関係のようなものがあるそうです。
なんでかというと、そのレポートにはその昔、アメリカへ入植してきた入植者たちが築いた文化の違いに「こと」を発しているそうで、簡単にかいつまむと、ワクチン接種率が高いところは「社会の秩序を守ることが個人の自由より尊重される」という文化が根底があるため、ワクチン接種をすることは社会の秩序を守ることになり、摂取率が高くなっているそうです。
反対にワクチン接種率が低いところは、「政府にコントロールされることを嫌うアンチガバメント的な文化」が根底にあるため、そういったことからワクチン接種を嫌う傾向にあるそうです。そして前者が民主党の州で、後者が共和党の州となっているそうです。この論は私にはとっても面白くて、こう言われると、民主党と共和党が「白黒」と分かれるように対立することや、SDGsの進み具合に州で大きな差が出るのになるほど〜と納得がいったのですが、どうでしょうか。
次回からはテーマごとにアメリカと日本のSDGsの進み具合の話を聞いていきたいと思います。次回は電気自動車です。最近、アメリカでも電気自動車を本当によく見るようになってきましたが、SDGsの視点から日本との違いなど話を聞けたらと思っています。ありがとうございました。
第三回目
2023年10月16日放送分
電気自動車はどこで人気なの?世界の自動車業界はどこに向かって進んでいるの?アメリカの「奥の手」とは?
書き起こし
青字:ナビゲーター 井口由美
黒字:ゲスト 山口日出夏
3回目の今回は最近よく話題に上がる、アメリカでもちらほら見かけるようになった電気自動車についてお話いただきます。よろしくお願いします。
早くもシリーズ3回目ですね!今回もよろしくお願いします!
井口さん、まず初めに、電気自動車って聞くとどの車を思い浮かべます?
テスラとか日産リーフとかが有名な感じがしますよね!?
そうですよね、他にはどうです?
例えばプリウスとかどうです?
プリウスってハイブリッドの?
そうです、ハイブリッドのプリウスです。私も一台、日本ではアクアと呼ばれているプリウスCを所有しているんですが、燃費が恐ろしくよくて一回給油したらしばらく安泰で気に入っているんですが、
あ、プリウスは燃費がすごくいいとは聞いたことがあるけど、確かハイブリッドはコード使って充電しませんよね??だから電気自動車ではないような。電気自動車なんですか?
そうなんですよね、ハイブリッドは実は電気自動車の仲間に入ったり入らなかったり、結構曖昧な立場にあります。先ほど出てきたテスラやリーフといった電気自動車ってどうやって動いていると思います?
電気で充電して走行?
その通りですね、充電した電気を使ってモーターを動かして走行するのが電気自動車。じゃ、今まで主流であったガソリン車はどうでしょうか?
ガソリン車といえばガソリンですよね。
そうです、ガソリン車はガソリンを燃料としてエンジンを動かして動くんです。じゃぁプリウスのようなハイブリッド。ハイブリッドはどうなんでしょうか?
ハイブリッド、ん〜〜両方?
そうです、実はハイブリッドはエンジンもモーターも両方持ってて、ガソリンも電気も両方使って走るんですね。じゃぁ両方使う車はどっちに区分できるのか、ガソリン車?それとも電気自動車か?
ハイブリッドの他にも充電コードを使って充電もするけどガソリンも使うプラグインハイブリッド車というのもありますよね。これもガソリン車なのか、それとも電気自動車なのか?
どっちでもあるしどっちでもない。なるほど、区分が難しいですね。
そうなんです、なのでハイブリッド車やプラグインハイブリッド車が電気自動車として語られることもあるし、ガソリン車に入ることもある。結構この区分ってのが大事なので、そういったことをまず、ちょっと頭の端っこに入れておいてもらってから、今日の話を進めていきたいと思います。
わかりました、何が電気自動車で何がガソリン車かっていうことが大事になってくるんですね。
ところで、私の住んでいるシカゴ周辺でも結構テスラなんかを見かけるようになってきましたが、電気自動車ってどれくらい増えてきてるんでしょうか?飛ぶように売れてる感じなのでしょうか?
そうですよね、電気自動車、このところ増えてきた感じがありますよね。こないだもケンタッキーの方にキャンプに行ったらテスラを何台か見て、テスラの後ろにキャンプ道具を積んだ小さな車があるのが何台かあって、え〜テスラで引っ張ってきたの〜?そしてテスラでキャンプ!?とちょっと驚いたんですが、
電気自動車の普及具合は、国によっても違うんですが、世界で一番電気自動車が売れてるのはどこだと思いますか?じゃぁちょっと選択問題で。
1)アメリカ、2)ヨーロッパ 3)中国、4)日本
ヨーロッパかしら?
実は世界で一番電気自動車が売れているのは中国なんです。
え、中国!?なんか意外でした
電気だけで走る電気自動車、テスラやリーフのような車を「バッテリー式電気自動車」と言って英語では「BEV」というのですが、中国での電気自動車の勢いはすごくて、2022年の去年1年間だけで、中国ではBEVが435万台も売れました。同じ年に日本で売れた乗用車の総数、ガソリン車もハイブリッド車も電気自動車も全部合わせて、420万台だったので、日本で売れた車全部よりも多い数のBEVの電気自動車が、中国で売れたことになります。
実は、中国で売れた新車の22%がBEVでした。
22%がBEVだったということは売れた車の4、5台に一台がBEVってことですか。それはすごい勢いですね。
そうですね、まさに飛ぶ鳥を落とすような勢いですよね。
ちなみに2位はヨーロッパ160万台、3位はアメリカ75万台、4位は日本で3万台で、日本の電気自動車の市場はアメリカの25分の1、中国の100分の1以下しかありません。
なるほど、では電気自動車があまり人気がない日本はガソリン車が中心ってことなのでしょうか?
実は日本はハイブリッドがとても人気で、ざっくりいうと売れている車の半分以上はハイブリッド、そして他の半分より少し少なめがガソリン車で、BEVの電気自動車は全体の1、2%です。そしてガソリン車の割合は減りつつあり、ハイブリッドがどんどん増えているのが今の日本の傾向です。
ハイブリッドがそんなに多いのは意外でした。アメリカではそんなにハイブリッドを見ない気がしたので。
そうなんですよね、アメリカはがっつりガソリン車が主流で、ハイブリッドは7%です。ちなみにアメリカのBEVは7%まで増えてきてで、今はハイブリッドと肩を並べてる感じでです。
ところで、電気自動車が増えてきたのはどんな理由があるんでしょうか?
そうですね、地球温暖化の影響が大きいと思います。ガソリンを使って走るガソリン車は走行中に二酸化炭素を排出するので、地球温暖化の大きな要因になってしまっているため、ガソリン車を減らしていかなくちゃいけないという理解のもと、じゃぁガソリン車代わりに何にするか、で出てきたのが、電気自動車や燃料電池自動車や水素自動車なんかです。
ではじゃあSDGsが採択された2015年ごろから電気自動車が注目されたってことなのでしょうか?
そうですね、SDGsの採択は電気自動車の普及を促進する一つの要因にもなっていますが、電気自動車の重要性が注目されたのはもっとさかのぼり、1990年、今から30年以上前にアメリカのカリフォルニア州が、ゼロエミッション法という法案を可決したのが大きなきっかけになっています。
ゼロエミッション法・・・
カルフォルニアで販売する車の2%、2%つまり50台に1台は二酸化炭素を排出しない、つまりガソリンを使わない車にしなくてはいけないということを決めたのがゼロエミッション法です。
アメリカの中でカリフォルニア州だけが決めたんですね?
そうなんです、これはカリフォルニア州だけの法律なんですが、実はこの法律は世界でも先駆的で、この法律の制定によって、世界の自動車業界が電気自動車の開発を急ぐ大きなきっかけになりました。例えばトヨタは、カリフォルニア向けにテスラと共同でRAV4の電気自動車バージョンを開発して販売しましたし、日産もこの法律ができたことで、3年間という急ピッチでリーフを開発することになりました。
30年以上前ですか、ずいぶんと前からカリフォルニアはガソリン車販売の規制を始めていたんですね。そしてそれが電気自動車の開発にもつながったと。
そして最近さらに電気自動車の導入に勢いをつけることになったのが、2016年に、後にノルウェーの首相になり現在の首相であるストーレ氏が、2030年までにノルウェーで販売する新車を、全てゼロエミッションにすると発表して、2025年までに全てのガソリンとディーゼル車の新車の販売を禁止すると決定したことでした。
この決定は世界にすごく大きい影響を与えて、その後、各国がノルウェーの方針に従うことになりました。
日本もガソリン車の新車の販売を禁止しましたよね。
そうですね、日本も2035年までに新車のガソリン車を売ることを禁止することになりました。
一方、アメリカはこの面では少し遅れをとっていて、国全体でのガソリン車の新車販売を禁止するとはしていなくて、カリフォルニア州、コネチカット、メリーランド、マサチューセッツ、ニュージャージー、ニューヨーク、オレゴン、ロードアイランド、ワシントン州の全部で9つの州だけが2035年までのガソリン車の販売禁止を決定しています。
なるほど、国家よりも各州の力が強いアメリカらしい動きですね。ではガソリン車の新車の販売禁止によって電気自動車だけが売ってもいい車になるってことなのでしょうか?
で、ここで問題になってくるのが、冒頭でお話ししていた、何をガソリン車、何を電気自動車の仲間とするか問題が出てくるんです。ヨーロッパは、少しでもガソリンを使う車は全てガソリン車とみなして販売を禁止することにしています。つまりハイブリッド、プラグインハイブリッドはガソリンを使うので、ガソリン車とみなされて売ることができないということです。
それに対して、日本はハイブリッド車、プラグインハイブリッド車は電気を使うので電気自動車の仲間と考えて、売ってもいい、という方針です。中国も日本と同様の方針で、ヨーロッパとは完全に違う道をいく予定です。
なるほど!ここでその問題が出てくるんですね。確かに何をガソリン車とするか何を電気自動車とするか立ち位置が違うと禁止するものも変わってきますね。で、ヨーロッパと日本は方向性が違うと。でもヨーロッパでハイブリッドもプラグインハイブリッドも禁止とは随分と厳しい規制ですね。ヨーロッパで日本のハイブリッド車も売れなくなるってことですか。そもそもガソリン車の販売を禁止となると、ガソリン車やハイブリッド車が強い日本はピンチなんではないですか!?
世界でいちばん売れている車のトップ10にトヨタカローラ、トヨタRAV4、トヨタカムリ、本田CR-V、トヨタHiLux、とトップ10のうち、半分は日本車がしめていますが、どれも電気自動車でもゼロエミッションでもありません。2035年までにはこれらの車を売れなくなる地域が増えるので、近い将来、トップテンのラインナップから日本車がなくなる可能性が高くなることが考えられます。ちなみに現在のトップ10に、テスラのモデル3とモデルYは両方入っています。
ガソリン車に加えてハイブリッドも禁止になるってことは、自動車業界はすごい勢いで変革を迫られますね。ではアメリカはどうなんですか?
アメリカは、さっきあげた先進的な州はヨーロッパと日本の間をとって、ハイブリッドはだめだけどプラグインハイブリッドはOKというスタンスを取っていて、ガソリン車とハイブリッドは禁止して、電気自動車とプラグインハイブリッドや他のゼロエミッションなどを進めようとしています。でも他の州ではまだ何も決まっていないのでまだなんとも言えませんね。
でもアメリカは国全体としてガソリン車の販売を廃止する、という方針をとってないということは、電気自動車も劇的に増えないなんてことにつながる可能性もあるのではないでしょうか?
そうなんですよね、州の力が強くて州の数も50もあるアメリカはなかなか国全体としてこういった目標を立てづらい文化にあるので、実はアメリカは他の方法で電気自動車を進めようとしています。
奥の手ですか?
そうです、奥の手です。
バイデン大統領は去年の8月に「インフラ削減法」という法律をつくって、気候変動対策に関するインフラなどを一気に進めようとしていて、お金にして約50兆円を当てています。日本の2022年度の国家の一般会計の歳出が110兆円だったのでその半分くらいの大きさのお金が気候変動対策に充てられていることなので、どれだけ大きな額かが想像できるかと思います。
その中に電気自動車の導入を促進する制度もあると?
そうなんです、電気自動車の導入を促進する制度もしっかり組み込まれています。
消費者として注目すべき点は、電気自動車を買うとその年に支払う所得税の額全体から最大7500ドル減税、減額してくれるという点です。新車だと最大7500ドル、中古でも最大4000ドルの税金を減額してくれます。
7500ドルですか、それはすごいですね。車の値段が直接安くならないとしても、結局は100万円以上お得になるということで、それはすごいインセンティブになりますね。
そうだと思います。でも日本側から見て注意すべき点は、この減税は全ての電気自動車にアプライするということではないことです。
この法律のそもそもの目的は、アメリカでの製造業にプラスとなるようにということなので、アメリカで組み立てられたり、材料や部品をアメリカ絡みのものを多く使っているものだったり、充電バッテリーもアメリカで製造された電気自動車に限られます。なので、アメリカの会社であるテスラ、フォード、GM、リビアンの4社から発売されているアメリカで作られた電気自動車が対象になります。唯一ホルクスワーゲンの電気自動車がアメリカで組み立てていて、部品調達もアメリカが多いことで、この仕組みが使えることになり、対象に入っていますが、日産リーフなんかの日本車は一台も減税対象に入っていません。
なるほど、国全体でガソリン車の禁止する目標は立てられないけれど、そういう方法でアメリカ産の電気自動車の普及を増やそうとしているんですね。
他にも自動車会社用に電気自動車の製造を進めるためのグラントが用意されていたり、バッテリー製造においても一こについて50万円ほどの恩恵を受けられる制度があったり、充電ステーションにおいても1兆円規模の投資が行われることになっています。
これによってバイデン大統領は2030年までに新車販売の半分は電気自動車にしようとしています。
各国で電気自動車の普及状態も目標も普及方法も全然違うことがわかり面白いですね。私はまだまだ電気自動車に買い替える勇気はないですが、電気自動車を買うのが普通になる日がすぐ近くまで来ている感じですね。
そうですよね、私もこないだフロリダのマイアミに行ってレンタカーした時にテスラを借りて初めて電気自動車に乗ったんですが、旅行中の電気自動車のレンタルはまだまだお勧めできないなって思いました。充電をいつするのかっていうのをちょくちょく考えなくちゃいけないのが少し面倒でしたし、充電中も近くにコンビニみたいのがあるわけではなかったので車の中で2、30分時間を潰さないといけないのが、旅行中はもったいないって思いましたし、一回アウトレットのモールで買い物しながらの充電を試みたんですが、充電が終わってそのまま車を置きっぱなしにしてると1分に1ドルずつ罰金みたいにお金を取られちゃうので、時間確認しながらの買い物で、チャージが終わりそうになったら走って戻って、とちょっと大変でした。充電ステーションがあるからって泊まったホテルも、テスラ仕様でなくて、テスラを充電するにはアダプターが必要だったりで、結局は充電できなくってとがっかりでした。でも電気自動車を購入して家で充電できるのであればそういうった問題は全てなくなるので、また話は違うなとは思いますが。



第四回目
2023年12月11日放送分
日本のジェンダー平等度は世界でどれくらい?ジェンダー不平等が起きる原因は?ジェンダー平等実現のために、世界はどこに向かって進んでるの?
書き起こし
青字:ナビゲーター 井口由美
黒字:ゲスト 山口日出夏
4回目の今回は、SDGsの5番目の目標である、「ジェンダー平等を実現しよう」にもある、ジェンダー平等ついてのについてお話をしていただきます。
今日もよろしくお願いします。
まずこの「ジェンダー」っていう単語ですが、あまり日本語では聞きなじみのない単語だと思うのですが、まずはこの単語の意味、定義の方から始めていただいてもよろしいでしょうか。
そうですね、「ジェンダー」は日本語だと「社会的意味合いから見た、男女の性区別」とか「社会的、文化的な性別」と訳されています。
「社会的、文化的な性別」ですか?まあ男女の性別のことだとは思うんですけれどなんだか少しわかりずらいですね。
そうですよね、ではちょっとクイズをしてみてもよろしいですか?
想像してください、あなたは妊婦さんだとします、
お腹が大きくなり、いよいよ出産時になり無事に赤ちゃんを産みました。
産婦人科のお医者さんに、「おめでとうございます、元気な男の子です」と言われました。出産後、Facebookで友達に報告をしようと思っています。
「無事赤ちゃんが生まれました〜!ジェンダーは男の子です」みたいな使い方って正しいと思いますか?それとも間違っているのでしょうか?
どうなんでしょう?なんか間違ってるのかな?
そうなんです、間違ってるんです。出産時にお医者さんが、「赤ちゃんの体のつくり」から判断する「男、女」、という性別は、「生物学的な性別」と言って、英語では「セックス」と呼ばれ、「ジェンダー」とは異なる性別になります。なのでこの場合だと、「無事赤ちゃんが生まれました〜!セックスは男の子です」というのが正しい言い方になります。
なるほど、生まれた時の体の作りの違いから分けられる性別が「セックス」であるってことですね、ってことはセックスは男と女、の2種類だけしかないってことでいいんでしょうか?
そうですね、セックスつまり「生物学的な性別」は男か女かの2種類ということになります。
なるほど、ではジェンダーは生まれた時の性別、とは違う意味の性別ということなんですね。
そうなんです、生まれた時に授かった性「セックス」に対して、ジェンダーとは、「育っていくうちに芽生えてくる、自分が認識する性別」のことを言います
「育っていくうちに芽生えてくる、自分が認識する性別」ということですか?
そうなんです、どういうことかというと、例えば、生まれた時には男の子で生まれて、後に女の子であると認識するような人がいます。このような、育っていくうちに生まれた時とは別の性別と認識する「トランスジェンダー」があったり、また男や女のどちらにも当てはまらない、「ノンバイナリージェンダー」と認識する人もいます。また、相手の人やその時のムードや日によってジェンダーが変化する「ジェンダー・フリュイド」と認識する人がいたりします。
実は、ジェンダーには実に多くの種類があって、あるアメリカの医学報告書によるとジェンダーは男性、女性以外に「72種類」もあるそうです。
72種類ですか?それは想像を超える多さですね。
そうですよね、すごい数ですよね。
なのでSDGsの5番目の目標「ジェンダー平等を実現しよう」っていうのは、ただ単に、「男女間の平等」を実現しようっていうのではなく、トランスジェンダーでもバイナリーでもどんなジェンダーを持つ人でも平等に機会のある社会を実現しよう、というもっと広い意味合いを含んでいることになっているんですね。
なるほど、なんか最近よく聞く「インクルーシブ」という概念と共通する感じがしますね
そうなんです、「インクルーシブ」、はSDGsでは欠かせない理念になっていて、すべての人が平等に機会が与えられた社会を目指すSDGsでは、ジェンダーにおいても、すべてのジェンダーの人が平等な機会を持つ世界を目指しています。
SDGsはすべてのジェンダーの人が平等な機会を持つ世界を目指している、なるほど。
それでは今日は、3つポイントに分けてお話しいただきたいと思います。まず1)日本とアメリカはどれぐらいジェンダー間が平等なのか、というジェンダー平等度についてと、2)ジェンダー間の不平等が生まれるそもそもの理由、そして3)ジェンダー平等を達成するために世界はどう動いているのか、の3ポイントです。
はい、お話の前に一つお断りしておきたいのは、ジェンダーギャップにまつわるデータのほぼ全ては、男女間の差、正確には男として生まれて男として生きている男の人と、女として生まれて女として生きている女の人の間に生まれる差、についてなので、今日お話しするのは、そう言った男女間の差にフォーカスを当てたものになっていることをご理解願いたいと思います。
はいわかりました、それではまずひとつめにあたります、「日本とアメリカのジェンダー平等度」からよろしくお願いします。
はい、ではまたまたクイズしたいと思います。今度は三択問題です。
「問題です、日本とアメリカのジェンダー平等度は世界146か国中、何位でしょうか?
1)1〜50位の間 2)50〜100位の間 3)100〜最下位の146位の間」
アメリカでは色々なジェンダーの人がいるのは当たり前のことになっているような感じがします。私の今の職場ではジェンダー間で差別みたいなものも感じないし、よきパートナーとして働けている感じがあります。なので、アメリカは1)1〜50位の間。
日本はなんとなくまだ問題がある気がしていますが、でも随分と注目されている問題なので改善されていると期待して2)50〜100位の間 かな??
いいですね〜アメリカは大当たりで1の1〜50位の間、日本はちょっと残念で、3の100〜最下位の間でした。
アメリカが当たったのは嬉しいですが、え、日本は100位以下ですか?
世界経済フォーラムがまとめたGlobal gender gap reportというレポートによると、2022年のアメリカのジェンダー平等度は43位でした。そして日本のジェンダー平等度は世界「125位」です。「125位」ですよ。調査対象の146カ国中、下から20番目、ちょっと驚きじゃないですか?
下から20番目ですか、日本がそんなに低いとはちょっと意外です。
そもそもジェンダー平等度ってどうやって測っているのでしょうか。
このGlobal gender gap reportでは、4つの分野に分けてジェンダー平等度を測っています。まずは、1つ目は健康面、そして2つ目は教育面、そして3つ目が、政治参画、国会議員や閣僚の人数に男女比があるかということ、そして最後4つ目は、経済参画、つまりは労働や賃金などにおいて男女比があるか、の4つの分野です
日本は125位とジェンダー平等度が低いとお話しましたが、実はこの4つの分野のうち2つの分野は、100点満点中ほぼ100点のスコアで、男女間はほぼ平等と評価されているのですが、健康、教育、政治、経済、のどの2つが男女間がほぼ平等だと思いますか?
日本は長寿国ですし、男女関係なく学校に行けてるような感じがするので健康と教育かしら。
おお当たりです。日本では女性も男性も健康的に長生きができて、女性も男性も等しく教育を受ける権利が与えられているので、日本の健康面と教育面のジェンダー平等度は高くなっています。
では残りの「政治」と「経済」の2つ分野が足を引っ張っているということですね。
そうなんです、政治の分野では、国会議員や閣僚の中での男女比率が調べられているのですが、日本では女性の割合が小さすぎて、100点満点中「10点以下」の評価がくだっています。10点以下です、すごい落第点です。
また経済の分野は、男女の賃金格差や管理職に女性が少ないとのことで100点中50点の評価です。10点以下の政治分野よりマシですが、50点も完璧に落第点です。
すごく点数が低いですね・・・。女性首相も今まで出てないですしね。でも経済分野が50点って、日本には男女雇用機会均等法などもあって結構進んでいるかと思ったのですが、あまり効果がでてないってことでしょうか
1990年頃、今から35年ほど前ですね、そのころは一般労働において、男性の賃金を100とすると女性は60だったそうです。でも今はその60から75になっているので、男女雇用機会均等法は効果はあったと言えると思います。
でも、ジェンダー平等度世界1位のアイスランドでは、男性100に対して女性は91なので、それと比べると日本はまだまだのところにいるのがわかると思います。
そういえばアイスランドでの賃金格差を埋めるストライキのニュースをみました。
10月にありましたね。およそ10万人の女性が1日に渡ってストライキに参加していたそうです。現在の日本の女性の賃金が75に対してアイスランドが91なのは、こういうアイスランドでの女性の努力の結果でもありますよね。
なるほど、確かにそうかもしれませんね。ではアメリカのジェンダー平等度の方はどうなんでしょうか?ランキングは43位でしたよね?
はい43位です。
アメリカも日本と同様に、健康と教育の分野ではほぼ男女間に格差はありません。
そして問題の経済と政治分野ですが、経済分野では、日本が50点に対してアメリカは80点と、日本と比べるとアメリカの職場での男女間の格差はかなり少なくなっています。
そして政治分野では、日本10点以下に対してアメリカは25点と、実はアメリカも落第点で、国会議員や閣僚において女性がまだまだ少ない状態になっています。
まだアメリカで女性の大統領が出てきてないことにも象徴されているかもしれませんね。
では、ここら辺で2つ目のポイントに移りたいと思いますが、ジェンダーギャップとは、そもそもどうして生まれてくるものでしょうか?
ジェンダー間の格差が生まれるのは「ジェンダーバイアスの存在」と言われています。バイアスとは日本語にすると偏見とか先入観と訳されますが、ジェンダーバイアスとは男はこうあるべき、女はこうあるべきといった、私たちが社会で育っていくうちに無意識に刷り込まれる思い込みであり、このジェンダーバイアスが、ジェンダーギャップを生み出す大元だと言われています
ジェンダーバイアス、例えばどんなものがあるのでしょうか?
例えばですね、女の子はピンク、かわいい、おしとやか、とか女の人はスカート、とか家事や育児をするのは女性の仕事みたいなこと
それに対して男の人は強いとか、男は泣かない、とか力仕事や危険な仕事は男性の仕事、というようなのがジェンダーバイアスになります。
確かに私も小さい頃「女の子なんだからお行儀よくとかよく言われていました、こういうのもジェンダーバイアスなんですね。
そうですね、そういったことも女性はこうあるべきといったジェンダーバイアスになります。
ところで、井口さんは、携帯とかアマゾンエコーの音声アシスタント、使われてますか?「Hey Siri、今日の天気はなに?とか、アレクサ、ニュース読み上げて」などのAIアシスタントのことなんですが。
アレクサ、使ってました、最近アマゾンエコーが壊れちゃって使ってませんが。
あれってSiriとかAlexaと女性の名前がついていて、音声も女性のものが使用されているのに気づきました?
あ、確かに!
こうやってAIアシスタントが女性を想像させることが、「女性の役割は要求に応じること」というジェンダーバイアスを無意識のうちに生み出している可能性があると指摘されています。
こういうことでもジェンダーバイアスになるって考えてもみませんでした。
そうなんですよね、いろんなところにジェンダーに対するバイアスっていうものは潜んでいて、結構意識しないとバイアスだったってことに気づきもしないことが多いことに気付かされます。
本当ですね、無意識にジェンダーバイアスしていることがありかもしれませんね。
私も、うちの息子がうだうだしてたりすると「男なんだからしっかりしろ〜」みたいのもついつい口にしてしまって、「あっやっちゃった」て思うこともしょっちゅうです。
ではここで3つ目のポイントに移りたいと思いますが、ではジェンダー平等を達成するために世界はどう動いているのでしょうか?
今世界は、ジェンダーにはとらわれない考え方をしよう、と「ジェンダーニュートラル」の方向に活発に動き出しています。
ジェンダーニュートラル、最近よく耳にしますね。
例えば、日本での制服は、長い間女の子はスカートというのが当たり前でしたが、今では誰もがスラックスでもスカートでも自由に選べる学校が増えてきているのはジェンダーニュートラル運動の良い一例だと思います。
その時はそれが当たり前だと思ってましたが、今思うと、女子の制服にスカートしかチョイスがなかったっていうのはすごく固定されていた概念だった感じがしますね。
ほんと、冬のスカート通学は寒かったですよね。
世界を見渡してみると、ジェンダーニュートラルの動向がたくさんみて取れます。
例えば、今年映画で世界中に旋風を巻き起こしたバービーですが、井口さんも映画見られましたか?
見ました。
昔のバービーというと、目がぱっちり大きくて、腰がくびれて足がすごく細く長くってという人間離れした形態のイメージがありますが、最近のバービーはもっと普通の人間に近い形態のバーションをたくさん出していて、ジェンダーに関してとても先駆的な動きを見せていて、今では、人形の顔や体型に、男や女といった区別をつけないで、性別がどちらとも取れないジェンダーニュートラルな人形を出しています。
ジェンダーの区別がつかないバービーですか、興味深いですね。
ジェンダーニュートラルになるように、唇をあまりふっくらさせないといか、まつ毛を盛りすぎないとかそういう注意がはらわれているそうです。
他にも化粧品やファッションブランドでは、ジェンダーニュートラルのラインを出すブランドが増えてきています。
ファッション界では「ユニセックス」の洋服が昔からあるので、ジェンダーニュートラルと言葉を言い換えただけで別に新しくないのでは?と思われるかもしれないですが、この2つには意味合い的に違いがちゃんと存在していて、
ユニセックスの洋服はシャツとかパンツとか元々男性用に作られた洋服に多いのが特徴で、男性だけじゃなくて女性も着れますよ、と門戸を広くした、みたいなところがあるのに対して、ジェンダーニュートラルは、性別わけするデザインコンセプト自体がもう古い、そこから抜け出して、もっと自由に自分の個性に合わせたファッションを楽しもうよ、といった風潮がみられます。
少し前になりますが、ウィルスミスの息子のJadenがルイビトンの宣伝でスカートはいてたのがニュースになりましたよね。
ありましたね〜、女の子3人と一緒にJadenがスカートはいてた宣伝ですよね。まさにジェンダーニュートラルファッションのいい一例ですよね。
面白いですね、おもちゃや化粧品、ファッションの他にもジェンダーニュートラルになってきている分野ありますか?
実は、私たちがつかう言葉もジェンダーニュートラルなものに変わりつつあります。
例えばですが、司会者が出だしに「みなさん〜」と言う意味で「ladies and gentleman」といってスピーチを始めたりするのを聞いたことがあると思いますが、この紳士、淑女とジェンダー分けする言い方はふさわしくないと今は「ladies and gentleman」を使わないで「everyone」のような言葉を使うようにかわってきています。
他にも、彼とか彼女を表すHe 、Sheなどは使わないで、ジェンダーがあわられないように複数形でTheyを使ったり、He,Sheの代わり、今までなかった「ze」のような全く新しい代名詞を作り出して使うこともあります。また、MrとかMrsとかMsとかすべての区別をやめて、全部まとめてMx(メックスとかミックスと読みますが)と表記することで、ジェンダーニュートラルになるような動きもみられています。
日本の小学校で子供たちを「なになにちゃん」とか「君」で呼ばないで「さん」に統一していくっていうニュースを見ましたが、同じような動きですね。
そうですね、これもジェンダーニュートラルの動きですね。
さて今日は、日本の政治や経済分野で、男女間に格差が大きいことや、わたしたちの中にあるジェンダーバイアスによってジェンダー不平等が生まれてしまうこと、そしてジェンダー平等を達成するために世界はジェンダーニュートラルの方向に動いているということをお伺いしました。
個人的にはSiriやアレクサなんかが知らず知らずにジェンダーバイアスを生み出すことにもなるっていうのがとても印象的でした。
さっき話しそびれましたが、ジェンダーバイアスで言うと、他にも、日本でよく使う、女医、女流作家、女性社長っていうのも突き詰めるとジェダーバイアスが元となっている言葉と言えます。日本ではお医者さんや、作家、社長などは男性がするのが当たり前という社会であることが見て取れます。
また反対にイクメンなんかは褒められた言葉で使われることが多いですがこれも育児をするのは女性が当たり前という社会であるからこそ生まれた言葉になっています。
確かにアメリカではイクメンに当たる言葉を聞きませんね。育児は男性もするのが珍しくないっていう表れですね。
でもアメリカでもジェンダーバイアスはまだまだ根強くあるようです。調査によれば、親がダンスのお稽古なんかを勧めるのは、女の子の方が圧倒的に多く、反対に男の子にはゲームのプログラミングやスポーツを勧める傾向が強いとありました。
こういうジェンダーバイアスは育ってきた社会や文化の影響を強く受けて、知らぬ間にうめこまれている感覚なので、意識しないと変えることはできないと思います。
まずは自分のなかにジェンダーバイアスがないか注意してみて、自分も含めて人をジェンダーのくくりでなく、個人としてみていく練習をしていくことが大事かなと思います。
そうですね。ジェンダーだけでなく、こういったことは宗教の違いや人種の違いなどにも共通して言えることかもしれませんね。
本当にその通りだと思います。みんなが意識して少しずつ変えようと努力することで、他人に対するバイアスが減って、インクルーシブな考え方へと変わっていき、最終的に、SDGsが目指すみんなが平等な機会が持てる社会に変わっていくのではないかなと私は期待しています。
ジェンダー平等を実現するには一人一人の意識の変革が大切ということですね。
今回のSDGsはジェンダーについてお話をお伺いしました。
日出夏さん、今日もありがとうございました。
次回のテーマは地球温暖化や気候変動についてのお話になります。
第五回目
2024年2月19日放送分
二酸化炭素と気候変動の関係は?二酸化炭素は減ってきてるの?温暖化と気候変動って同じこと?カリフォルニアのワインも温暖化の影響を受けてる?
書き起こし
青字:ナビゲーター 井口由美
黒字:ゲスト 山口日出夏
5回目の今回は、SDGsの13番目の目標である、「気候変動に具体的な対策を」に関係する、気候変動についてお話をしていただきます。
今日もよろしくお願いします。
気候変動といえば、日本では毎年、35度越えの猛暑日の日数を更新、なんてニュースがあり、去年の夏は私のいるシカゴでもとても暑くて、8月の下旬には最高気温が38度、湿度のせいで体感温度は50度近くにもなる記録的な暑さで、なんだか毎年夏が暑くなっているような気がしますが、どうなんでしょうか。
去年の夏は世界各地で熱波があって、井口さんが今言われたように日本でもとても暑くて、40度越える地域が出たりして、「猛暑日」のさらに上をいく暑さで「酷暑日」なんていう言葉が使われ始めたりしていました。
イタリアでも48度、モロッコなんかは気温が50度を超える日があって本当に色々な地域で暑かったようです。
一年を通じて見ても、2023年は暑い年だったそうで、世界の平均気温は、観測が始まったこの125年間の中で「最も暑い年」だったそうです。
しかも、コペルニクス気候変動サービスからの報告によると、もしかすると過去10万年で「最も温暖だった」可能性があるほど暑い年だったそうです。
10万年ってもしかして縄文時代より前の時代じゃないですか?
そうですね、10万年前というと時代区分では旧石器時代あたりで、アフリカで初期の人類が、動物を追って移動して暮らしてた、な〜んて言われる時代で、ちょっとあまりに長い期間で、その間で一番暑い年だったといわれると、だいぶびっくりしますよね。
本当に!
また去年は山火事のニュースが目立ちましたが、これも熱波で暑かったことが影響しているそうです
カナダでの山火事の煙がアメリカまで来てニューヨークを覆ってしまうほどひどい山火事がありましたよね。
ひどい山火事でしたよね、この山火事では、実に北海道2こ分の面積の森林が消失してしまったそうです。他にも、マウイでも山火事があって大変なことになりましたよね。去年は実はギリシャでもEU史上最大となった山火事があって、ロシアでも過去20年間で最大の面積の森林が山火事で焼失してしまっています
暑かった原因は、エルニーニョ現象やラニーニャ現象といった自然現象に、地球温暖化などが複雑に重なり合ったということだそうです
なるほど、やはり地球温暖化がからんできているんですね。この地球がどうなってしまっているのか本当に不安なところなので、今回は気候変動の話を中心に最初に「温暖化の原因」次に「二酸化炭素はちゃんと減っているのか」そして最後に「2種類の温暖化対策」の3つのポイントについて話を伺っていきたいと思います。
そしてその前に、一つお伺いしておきたいことがあるのですが、気候変動と地球温暖化とよく出てくる言葉ですが、同じ意味の言葉として使ってもいいのでしょうか?
そうですよね、同義として使われることがよくありますが、定義的には地球温暖化と気候変動にはしっかり違いがあります。まず地球温暖化というのは、長期的に地球の平均気温が上昇する現象を指しています、それに対し、気候変動というのは、こういった気温の上昇だけでなくもっと広い範囲の気候の変化、例えば、いつもだったら乾燥する時期に大雨が降るようになった、とか、反対に雨が全く降らなくなってしまって干ばつが増える、など今までの気候パターンに変化が生じることが気候変動なんです。
ということは、気候変動の一部に地球温暖化があるということ、ということですか。
そうですね、気候変動と称されるさまざまな気候の現象の1つに地球の平均気温が上昇するという地球温暖化があります。そして、こうした気候変動は地球温暖化が原因で引き起こされているという関係性があります。
なるほど、地球温暖化が気候変動を引き起こしているということで、ではまず最初のポイント「温暖化の原因」を伺っていきたいと思いますが、温暖化はやはり二酸化炭素の排出が原因ということなのでしょうか?
そうですね、大気中の二酸化炭素を含む「温室効果ガス」の「濃度」が高くなっているのが原因といわれています。
温室効果ガスとはよく聞きますが、地球の気温上昇とどういう関係があるのでしょうか。
地球にはいろんな種類の気体があって地球を覆っているのですが、二酸化炭素やメタンや一酸化窒素などの「温室効果ガス」と呼ばれる気体は熱を吸収する性質があるそうです。この温室効果ガスは今や、諸悪の根源のような悪者にされていますが、実は生き物が生きられるために、宇宙という寒いところに熱が逃げていかないように地球の温度を保ってくれるブランケットのような役をしてくれている大事な気体なんですよね。この温室効果ガスがないと地球は氷点下の世界になってしまうくらい大事な役目をしてくれているんですが、実は今、その温室効果ガスが増えすぎて、熱が地球にたまってしまっているという状態です。
ブランケットが分厚くなってしまったといった理解でいいんでしょうか?
そうですね、それかブランケットがキャンプの寝袋になっちゃったような感じかもしれませんね。
寝袋ですか、それは保温性が一段高い感じがしますね。
いくつか種類がある温室効果ガスの中で、二酸化炭素の排出される量が、他のものに比べて圧倒的に多いので、実は温室効果ガスの70%以上が二酸化炭素なので、二酸化炭素が特に問題視される理由になっています。
そして二酸化炭素の濃度が増えていくと地球の平均気温が上昇していくというのを気候モデルというものを作り出して予測したのが、2021年にノーベル物理学賞を受賞したプリンストン大学の真鍋淑郎先生なんです。
先生は今から50年以上前にすでに「大気中の二酸化炭素濃度が2倍になると地球の平均気温は2.36℃上昇する」という研究結果を発表されていて、この数値は最新の研究結果とほぼ変わらないほど正確な予測だそうで、この先生の研究が元となって、世界が二酸化炭素に注目するようになり、これはまずい、減らさなくてはいけないという現在に動きにつながっています。
私も真鍋先生のノーベル賞受賞のニュースをみて興味を持ち、どんな研究をされていたのかをちょこっと調べてみたのですが、先生の研究の内容が少し難しすぎてついていけませんでしたが、ノーベル賞受賞っていうことだけでもすごいことですが、先生の研究によって世界が地球を守るために動き出したとは本当にすごい功績ですね。
真鍋先生とは実は、ご縁があってお会いする機会に恵まれお話しさせていただいたことがあり、そのお話を私が作っているSDGsのワークブックのインタビュー記事として掲載させていただいたのですが、
真鍋先生は笑顔がすごくきれいで、ほんとうに素敵な先生で、ここに来られるまでにすごい試練を乗り越えられ、人の数十倍、数百倍の努力されたでしょうに「ノーベル賞もらうなんていうのは宝くじみたいなものだからいくら努力しても取れるものじゃないし、僕もまぐれでもらったようなもの、幸運でした」とすごく謙虚なことをおっしゃるんで、私は一瞬にして大ファンになってしまったのですが、私も先生の研究を理解しようと先生が書かれた「地球温暖化はなぜ起こるか」という本を読んでみたのですが、ちょっと難しすぎて序章で止まってしまいました。
わぁ素敵な先生ですね。そのエピソード、私もファンになっちゃいそうです。
その真鍋先生の研究が元になって現在二酸化炭素の排出量を減らそうと世界は動いているということですが、ここで次のポイント「二酸化炭素はちゃんと減っているのか」に移っていきたいと思います。実際二酸化炭素の排出量は減ってきているのでしょうか?
人間活動から出される二酸化炭素の量は、残念ながらまだ減ってきていないのが現状です。2020年はコロナの影響で、一回下がりましたが、2021年には再び上昇に戻ってそれから2022年、2023年と増え続けていて、現在は今までで一番多い排出量になってしまっています。
え、二酸化炭素は減らずに逆に増えているんですか?
そうなんです。産業革命前に比べて地球の平均気温が1.5度を超えてしまうと、気候変動の影響はより破滅的になるといわれているので、これを防ぐために国連が進める国際的な会議では、人間の活動から出される二酸化炭素排出量をは2050年までに実質ゼロにしようと各国で取り組みが進められています。その効果が出始めるのが2023年以降といわれているので、もしかしたら去年がピークでこれから下がっていくかもしれません
産業革命前に比べて地球の平均気温が1.5度を超えてしまうと、気候変動の影響はより破滅的になるということですが、今、何度ぐらい上がっちゃってる状態なんでしょうか?
実は去年は産業革命以前の世界平均気温より1.48度高かったとのことです。
1.48度ってもうほぼ1.5度ですね
エルニーニョ現象やラニーニャ現象があったといえどももう1.5度目前でかなり危機的な状態にあるように思います。
ちょっとかなり不安になってきました。ここで最後のポイント「2種類の温暖化対応策」に移っていきたいと思います。温暖化の対応策ということですが、世界平均気温の上昇を止めるにはまず二酸化炭素の排出を減らしていかなくてはいけないということですね。
そうですね、産業革命以後、人間の活動によって二酸化炭素の排出が急激に増えてしまったので、まずは二酸化炭素を減らそうとしています。取り組みとしては、石油などの化石エネルギーの利用を減らして再生可能エネルギーにシフトすることを進めたり、節電、省エネなどが進めたりしています。また、植林などをして森林の量を増やすことで大気中の二酸化炭素の量を減らそうとしています。
「2種類の対応策」とはこれが一つで、もう一つ対応策があるということですか?
そうなんです、地球温暖化の対応策には2種類のアプローチがあって、今お話しした、地球温暖化の原因となる二酸化炭素などの温室効果ガスを減らして、地球が温暖化していくのをできるだけ防ごうとする取り組みは1つ目のアプローチで「緩和策」と呼ばれています。
緩和、ですか。
これは「Mitigation」という英語を訳して「緩和」になっているのですが、世界全体で二酸化炭素の排出を減らして温暖化という有害なもののリスクを軽減してやわらげよう、緩和しようとする取り組みという理解でいいと思います。
なるほど、そしてこの緩和だけでなく2つ目の温暖化対策があるということですね。
そうなんです、今お話した一つ目の緩和策で、二酸化炭素をマックスにへらしていっても、実は、もうすでにかなりの二酸化炭素が排出されてしまっていて、ある程度の温暖化や気候変動は避けられないところまで来てしまっているんですね。
なのでこの変化していく気候の中で生きていく術を見つけていこうとする「適応策」というものが2つ目の温暖化対策です。
英語ではAdaptationです。
例えば、気温が上がっていくと熱中症や感染症が増えることが予想されるので、その対策をしたり、大雨が増えそうなところは洪水の対策、また海面上昇に備えて対策を取ろうとするのが適応策になります。
農業なんかも気温上昇に影響を受けやすいのでその対策が急がれています。もうすでにリンゴやぶどう、みかんやトマトなどが高温によって、表面の皮の色が悪くなるという着色不良が起きています。そしてお米も、夏が暑いことで品質に影響が出てしまっているので、高温でも大丈夫なように品種を改良するなど対応がされ始めています。
ワイン作りも温暖なカリフォルニア州が中心だったのが、北上してワシントン州でもワイン作りが始まっているというのを以前聞いたことがあるのですが、これも適応策ですね。
そうですね、これも適応策ですね。気温の上昇に応じて、ワシントン州でワイナリーを始める人が増えているようです。
ワシントン州でのワインの生産量はこの20年間で2倍以上に増えているそうで、現在はカリフォルニア州に次いでアメリカ第2位のワインの生産量があるそうです。 カリフォルニアのワインはアメリカ国内の80%を占めるほど堂々一位の生産量なんですが、実はこの20年間でその生産量が20%減少しているのをみると、まぁ、要因が他にもあるのかもしれませんが、一つに温暖化に適応するためにワインの生産地が徐々に北に移っていると考えるのは間違ってはいないと思います。
さて今日は、気候変動が起きている原因に地球温暖化があり、その温暖化の原因に二酸化炭素があること、そして二酸化炭素はまだ減っていないこと、
そして「緩和策」で二酸化炭素を減らす取り組みをして、同時に「適応策」で温暖化の影響に備えていくという2種類の対策が行われているということをお聞きしました。
去年の二酸化炭素の排出が史上最大の量だったというのは、なんというのか、とっても驚きなんですが、それでも今年から下がっていくかもしれないということで、予定では2050年までに実質ゼロという目標には届きそうなんでしょうか?
IEA国際エネルギー機関の予測レポートによると今のところ二酸化炭素排出量が今よりは減少していきそうですが、今の減らし方ではネットゼロはまだ夢のまた夢というレベルです。
え、そんな・・・
温暖化や気候変動はすべての国、そして地球に住む全員に影響してくる問題で、そしてこのままではその影響を最小限に抑えることが到底無理な状態まで来てしまっているので、気を引き締めて、みんながはちまきをしめ直す感じでのぞまなければいけない危機的な状態にあると言えると思います。なので、誰かがやってくれるだろうではなくて、私たちも地球の一市民として、地球温暖化や二酸化炭素排出に責任を持つ気持ちが、大切なんじゃないかなと思います。一人一人、一つ一つの影響は小さいかもしれない、でもそれを集めて大きな力にしていくことが今こそ必要なんだと思います。
地球の一市民として地球温暖化や二酸化炭素排出に責任を持つ、そうですね、背筋が伸びる思いです、今日から私も生活を見直してみようと思いました。
今回のSDGsは気候変動についてお話をお伺いしました。
次回のテーマはSDGsの一番最初に設定されている目標、貧困、についてのお話になります。途上国と先進国との両方における貧困問題についてお話いただく予定です。
日出夏さん、今日もありがとうございました。
第六回目
2024年4月23日放送分
日本での貧困はどれぐらい深刻!?アフリカは宇宙産業に乗り出して貧困対策しようとしている!?ビルゲイツのトイレは廃棄物が飲めちゃう!??などなど
書き起こし
青字:ナビゲーター 井口由美
黒字:ゲスト 山口日出夏
6回目の今回は、SDGsの最初の目標である、「貧困をなくそう」に関係する、貧困問題についてお話をしていただきます。
今日もよろしくお願いします。
さてこのSDGsの「貧困をなくす」という目標なのですが、本題に入る前に、貧困とはどういう状態をさすのか、例えばこの目標は「このグループは貧困層」だからこの貧困の状態を改善しないといけない、とそういうようなことだと思うのですが、どういった物差しで貧困を測っているのか、まず貧困そのものの定義みたいなところから聞いてみたいのですが、どうでしょうか。
実は、貧困には定義や、貧困を測る物差しがいくつかあって、国や機関によってそれぞれ異なったりして一つだけではないので、とてもいいスタートポイントだと思います。では逆に質問ですが井口さんは、「貧困」と聞いてどのような状態を思い浮かべますか?
えっとそうですね、お金がなくて苦しい状態・・・でしょうか?
そうですよね、今世界で一番広く使われている「貧困」か「貧困でないか」を分ける物差しになっているのは、生活に使えるお金の量になっていて、
国際的には、「1日を2.15ドル、日本円にして大体300円で生活しなければならない状態を「絶対的貧困ライン」と呼んでいて、このラインを下回る生活、つまりご飯や、水、電気、家賃、洋服、薬や病院などに使えるお金が1日300円もない生活は、「生きる上で必要最低限の生活水準が満たされていない状態」とされ、絶対的貧困と呼ばれ、貧困であるとされています。
なるほど、1日の生活に使えるお金が三百円ですか。1ヶ月にすると1万円弱。だいぶ苦しい生活ですね。
そうですよね、こうした絶対的貧困の中で住んでいる人は現在ほとんどが途上国に住んでいます。
あ〜でも!アメリカでも日本でも生活資金が一日300円以上あってこの絶対的貧困ではないけれども貧困と言われる層はありますよね。
そうなんです、この1日2.15ドル未満の絶対的貧困に対して、相対的貧困という種類の貧困もあります。そこに住んでいる大多数の人よりも所得が低く貧しい状態は相対的貧困と呼ばれています。働いても所得が低く金銭的に困り、生活が苦しい状態をいいます。これも貧困です。
なるほど、貧困には絶対的貧困と相対的貧困の2種類の定義があるということですね。共通しているのはそれぞれの貧困を決めているのは所得ということなのでお金ということですね?この他にも貧困の定義はあるのでしょうか?
そうなんです、今、井口さんがおっしゃったように絶対的貧困と相対的貧困は、生活に使えるお金がいくらあるかといったことで貧困を定義しているわけですが、実は貧困はそういった経済面だけでは測れないんじゃないか、例えば1日2.15ドル以上のお金があったとしても住むところがなかったり、十分な食料がなかったり、ちゃんとした教育や医療が受けられていなければ、そういう状態は貧困であるとするべきだとするところもあって、「UNDP国連開発計画」などでは貧困を「教育、仕事、食料、保険医療、住居、エネルギーなど最も基本的なもの・サービスを手に入れられない状態のこと」と定義していて、お金の面だけでなく、生きていくために大切な社会サービスが利用できるかできないかということでも貧困であるかどうかを判断しようとしています。
なるほど、そういう貧困のとらえ方もあるのですね、定義が一つではないということが貧困という問題が複雑な問題であるということを垣間見た気がします。
さて、今回はSDGs1番目の目標である貧困撲滅について、2つのポイント、「世界の絶対的貧困の現状」と「日本の相対的貧困の現状」、のこの2つのポイントからお話を伺っていきたいと思います。
ではまず1つ目のポイント「世界の絶対的貧困の現状」についてですが、先ほどのお話では1日の生活費が2.15ドル、日本円にしておそよ三百円を下回る生活を強いられている人たちを絶対的貧困と呼ぶということでしたが、現在の絶対的貧困の規模は世界全体でどれくらいなのでしょうか?
絶対的貧困に苦しんでいる人は開発途上国を中心に現在およそ7億人いて、世界の十人に一人の割合ということになります。
7億人ですか、とても多い数に思えますがこうした絶対的貧困にある地域はやはりアフリカ諸国などが中心なのでしょうか?
そうですね、絶対的貧困にある人はアフリカや南アジアに集中していて、その中でもアフリカのサハラ砂漠より南側のサブサハラアフリカに住んでいる人が特に多くて、絶対的貧困にある人の半分以上はサブサハラアフリカに住んでいるんです。例えばサブサハラアフリカにあるマダガスカルやモザンビークでは8割近い人が絶対的貧困にあります。
え、マダガスカルって星の王子様に出てくるバオバブの木があるところですよね?8割が貧困に苦しんでるんですか?知りませんでした。ん〜そう言った絶対的貧困に陥ってしまう原因にはどんなことがあるのでしょうか?
主な原因にはまず国が経済的に貧しいことで産業が発展していなくて国内に十分な収入を得る仕事がないということがあります。また紛争が多発する地域などでは、多くの市民が難民となってしまい貧困を生み出す原因になっています。2022年の時点では1億人もの人が紛争や迫害などが理由でそこに住めなくなって家を追われていました。紛争は仕事や住居など生活基盤の全てを失う人を多く出すため、絶対的貧困の大きな要因になっています。他には洪水や干ばつなどの自然災害によって貧困に陥るケースなどもあります。世界銀行によると年間2600万人が自然災害の被害によって家や仕事や財産を失ってしまい絶対的貧困に陥ってしまっています。
経済問題、紛争や自然災害が主な原因ということですが、以前、アフリカのどこかの国で貧困削減のために人工衛星を打ち上げているというニュースを見たのですが、貧困削減と人工衛星という組み合わせがちょっと意外だなと思ったのですが、こういった取り組みは効果的なんでしょうか?
人工衛星の取り組みはエジプト、南アフリカやモロッコ、アルジェリア、ナイジェリア、ガーナ、モーリシャス、アンゴラなどで行われています。確かに、貧しいアフリカが高価な人工衛星を打ち上げることに贅沢だ!というような批判もあったようですが、私個人の意見としては、こういった新しいテクノロジーを活用することで、先進国とは違った方法で経済発展や社会発展をしていけるのではないかと期待しているところもあります。
先進国とは違った方法での経済発展ですか?
以前は、途上国での発展は先進国が通ってきた方法で発展していくものだと考えられていたため、電気がないところは電線を通す、電話がないところは電話線を通すという風に開発をしようとしていたために、山奥や人口が少ないところは採算が合わないために置き去りにされてたという現状がありましたが、今では、新しいテクノロジーを利用することで、電線を通さなくてもソーラーパネルなどを使えばすぐに発電することもできますし、電話線を通さなくても携帯電話を使えばインターネットに接続することもできるようになりました。
ビルゲイツも水がなくて水洗トイレが設置できない地域のために、水を使わないトイレの開発も行っていますよね。
そうですよね、オムニプロセッサーですよね。水を使わないだけでなく排泄物が飲み水に変わったのは本当に驚きでしたよね。そんなことのように、人工衛星を使えば、地上のデータを集められることができて、そのことで食糧生産、難民対策、災害対策に役立てることができたり、衛星通信を使って遠隔地医療や遠隔地教育をする可能性も高まるんですよね。テクノロジーの発展は途上国の社会問題や貧困問題を解決する糸口になる可能性を大きく秘めているので、そう言った意味でも私はアフリカでの人工衛星の活用に期待をしています。
なるほど、私も人工衛星に使うお金があればたくさんの人の今日のご飯が買えるのでは?と思っていた派でしたが、テクノロジーの発展で貧困削減を進められるという意見にも確かに納得です。このように貧困を削減するために世界各地で色々な取り組みがなされていると思いますが、SDGsの中では絶対的貧困についてどう目標が立てられているのでしょうか?
SDGsでは、最初の目標「貧困を無くそう」の中の一番最初のターゲット、1-1で、「2030年までに絶対的貧困を終わらせる」と書かれています。
2030年までに絶対的貧困を終わらせるですか、力強い目標ですね。目標に向かって順調に進んでいるのでしょうか?
貧困問題に対する国際的な努力のおかげで、絶対的貧困に苦しむ人の数は毎年減り続けていてこの35年の間に20億人から6億人までと三分の1に減ったのですが、実は2020年にはこの何十年間かずっと減り続けていた貧困の人の数が減り止まりしてしまっています。
2020年というと、もしかしてコロナの影響ですか?
そうなんです、新型コロナウイルスによる影響やロシアのウクライナ侵攻による世界的なインフレで食料や燃料の価格が高騰してしまい、結果として、絶対的貧困に苦しむ人の数は、6億人から7億人に増えてしまいました。
あ・・・でも、2030年までゼロにする目標達成はまだ実現可能範囲なのでしょうか。
このままの状態が続くとSDGsの目標達成はかなり難しいと言われていて、SDGsが終了する2030年でもまだ6億人の人が絶対的貧困に苦しむ、厳しい状況が続くと言われています(UN)。
コロナも落ち着いたとはいえ終わっていませんし、ウクライナ侵攻もまだ続いている状態で、貧困をさらに拡大させないためにも早くこのような状況が終息することを願います。
さてここまで1つ目のポイント「世界の絶対的貧困と現状」についてお話ししていただきましたが、ここからは2つ目のポイント「日本の相対的貧困の現状」に移っていきたいと思います。ところで日本における貧困削減もSDGsの目標に入っているのでしょうか?
ちゃんと入っています。SDGsが設定される以前では、途上国の貧困の削減が国際的な議題の中心になっていて、絶対的貧困の削減だけに焦点が当てられることが多かったのですが、SDGsになってからは、「誰一人取り残さない」、という考え方のもと、途上国だけでなく先進国の貧困削減にも焦点が当てられています。
えっと先進国の人の貧困ということで、相対的貧困・・・
そうなんです、冒頭にお話しした、相対的貧困という貧困を減らそうことです。
なるほど、先進国でも貧困をゼロにするという目標ですか?
先進国では「2030年までに貧困の人の割合、つまり相対的貧困を少なくとも半分減らす」という目標になっています。
相対的貧困とはそこに住んでいる大多数の人よりも所得が低く貧しい状態と先ほどお伺いしましたが、これも何か1日三百円のようなはっきりとした数値みたいのはあるのでしょうか。
あるんです。この相対的貧困は、手取りの大きさと世帯の大きさで決まるのですが、日本では例えば一人世帯の場合、手取りの年収が127万円以下の人が相対的貧困にあるとされています。4人世帯の場合だと約250万円です。
なるほど、一人世帯の場合、手取りの年収が127万円以下、4人世帯の場合だと約250万円ですか、はっきりした所得による貧困ラインがあるんですね。日本で相対的貧困にある人っていうのは多いのでしょうか、少ないのでしょうか?
実は日本の相対的貧困にある人の割合は高くて、貧困率は15.4%となっています。他の先進国と比べてみると、アイスランドは4.9%、フランス、オランダは8.5%、イギリス11.7%、アメリカは15.1%となっていて、実は他の先進国と比べると日本の貧困率は一番高い割合になっています。
え、そうなんですか!?私個人の感覚ですが、アメリカなんかは所得の格差が大きくて貧困の層が厚いイメージがあって貧困率が高いと聞くと納得で、日本は逆に「一億総中流」のイメージで貧困率がアメリカより高いと聞くと少し驚きなんですが・・・これは最近の傾向なんでしょうか、それとも昔から高かったのでしょうか?
今から40年前の1985年の日本の貧困率は12%で、そこから毎年上昇しています。実は40年前から日本の貧困率は比較的高くて、そのあとも、貧困が毎年深刻化しているとった状態と言えると思います。
そうなんですね・・・日本の貧困率が高い理由は何なんでしょうか?
実は理由はたくさんあるんですが、まずこの20年以上日本の経済が停滞していて、経済が不況であることによって一般労働者の賃金が長期的に低下していること、そして働き方が変わって非正規雇用者が増えたこと、そして離婚と未婚の母が増えたことによって母子世帯の数が増えたこと、そういったことによって働いているのに生活が苦しいワーキングプアが多いということがあります。他には人口が高齢化して高齢者が多いことも要因になっています。高齢者がいる世帯の4世帯に1世帯は貧困状態にあり、単身で住む女性の高齢者は半分以上が貧困にあるなど、高齢化も日本の貧困率を引き上げている理由の一つになっています。
なるほど経済や、雇用形態の変化、高齢化など色々な要因が複雑に組み合わさっているんですね。非正規雇用者が増えたとはよく聞きますが、どれくらい増えているのでしょうか?
今から40年前の1985年ごろは全体の15%、6〜7人に一人が非正規雇用だったのですが、現在では37%まで増えていて、働いている人の2〜3人に一人は非正規雇用となっています。
2〜3人に一人ですか!それは確かに多いですね!
SDGsでは貧困率を少なくとも半分にするとのことで、日本の相対的貧困率が15.4%ということで単純計算で7.7%以下にしていくことだと思うんですが、日本では貧困を減らすためにどんな取り組みが行われているのでしょうか?
日本の貧困への主な取り組みは1950年からある「生活保護法」、2013年にできた「子供の貧困対策の推進に関する法律」2015年にできた「生活困窮者自立支援法」などがあり、経済面、生活面、教育面、就労面などから貧困対策がとられています。
最低生活が維持できない場合に受けられる生活保護を現在およそ200万人の人が受けているのですが、実はこれは生活保護の制度を利用できる人のほんの2割くらいと言われています。つまり生活保護を受けるべき状態にある貧困にある人が日本には1000万人ほどいて、そしておよそ800万人の人が支援のないまま貧困に苦しんでいることになります。
生活保護を受けるレベルの貧困にある人が1000万人規模ですか。神奈川県の人口が確か900万人、1000万人弱ですから日本の貧困問題の深刻さがこの数字からも見て取れますね・・・
その他にも貧困に困る家庭の子供たちがお金がないために、教育を受けることをあきらめて、そして教育がないことで賃金が低くて安定しない仕事について、また貧困に陥ってしまうという貧困ループを断ち切るためにも、5年前ごろから家計が苦しい家族の子供たちを対象に幼稚園や保育所を無料にしたり、私立高校の授業料を無償化したり、大学での奨学金や授業料免除を受けられる人を拡大したりする取り組みもされています。
他にもシングルマザーやシングルファザーの家庭が貧困に陥る場合が少なくないことから、ひとり親の家庭には、月4万円ほどの児童扶養手当などが子供が18歳になるまで支給されています。
そして近年はベーシックインカムについて世界的に議論されていて、効果を試すために実験的に導入を行う国や都市も増えてきていて、ベーシックインカムを導入することで貧困の問題を解決できるのではと注目が集まっています。
アメリカでもロサンゼルスやデンバーなどで実験的に導入されていましたよね、日本でもベーシックインカムが導入されるのかなと私も興味を持って見ています。
さてもっとお話を聞きたいのですが、時間が来てしまいました、今日は、SDGsの1番目の目標「貧困を無くそう」から世界と日本の貧困の状態についてお聞きしましたが、どちらも目標達成にはまだまだ解決しなければならない問題がたくさんあるという印象を受けました。
貧困問題は単に所得だけの問題ではなくて、貧困が原因で栄養失調、感染症などの健康被害、人権問題、児童労働、教育、医療、情報の格差、性差別、児童虐待、犯罪、過労死、自殺、果てには戦争などと、貧困はさまざまな問題の原因になっているため、SDGsでも貧困の撲滅は最重要課題になっています。
そういうふうに聞くとSDGsの最初の項目に貧困をなくす目標が立てられているのも納得です。
今日も内容の濃いお話を伺いました。そして終わる前に一つみなさまにお知らせがあります、実はこのシリーズは6回シリーズということで始まり、今回が最終回の予定でしたが、おかげさまでこのシリーズが好評で、シリーズの延期が決まりました。このシリーズを視聴してくださり、応援してくださった方、本当にありがとうございます。
シリーズの延期、とても光栄です。ご期待に添えるよう、引き続きがんばりたいと思います。
第七回目
2024年6月3日放送分
プラスチック問題について
プラスチックと戦争の深い関係や、タバコもプラスチックゴミ問題に加担してる???マイクロプラスチックのことなどなど
書き起こし
青字:ナビゲーター 井口由美
黒字:ゲスト 山口日出夏
7回目の今回は、プラスチック問題についてお話をしていただきます。今日もよろしくお願いします。
プラスチック製品といえば安くて軽くて便利という感じですが。
そうですよね、プラスチックという単語の語源はギリシャ語の< plastikos プラスティコス>という「自由に加工できて形を変えられる」、という単語が語源だそうなんですが、この言葉にあるように、プラスチックは思い通りの形にしやすいといった長所があって、しかも今井口さんがおっしゃられたように安くて軽くて丈夫、水にも強いし錆びない、といった他の素材にはない多くの長所があるんですよね。
そうですよね、特に収納ボックスなんかはプラスチック製だと軽いし、綺麗にしやすいし中も見えるし本当に便利だと思います。
わかります、あとサランラップとかジップロックとかのプラスチック製品のおかげで鮮度を保って食品を保存することができますし、フライパンのコーティングに使うフッ素樹脂もプラスチックで、このおかげでプライパンにこびりつきやすい卵などを綺麗に焼くことができますし、車の部品などにプラスチックを使うことで軽量化してガソリンの使用量を減らすことができたり、家の断熱材として使うと省エネに貢献できたりして、本当にプラスチックはいい点がたくさんあって、現在の私たちの生活にはなくてはならないものになっていますよね。
そう聞くと私たちはかなりプラスチックの恩恵を受けて生活していますよね。
メガネなんかも軽くて衝撃に強くて傷つきにくいことから今は95%以上がプラスチックレンズなんだそうです。
確かに!私が今かけているメガネのレンズもプラスチック製です!
さて今回は様々なところで私たちの生活を支えているプラスチックの話を、3つのポイント、「プラスチックが増えたのはいつ?」、「プラスチックのゴミの問題」、「マイクロプラスチック」の、この3つのポイントからお話を伺っていきたいと思います。
まずは一つ目のポイント「プラスチックが増えたのはいつ?」から始めたいと思いますが、プラスチックはそもそもいつぐらいから使われているのでしょうか?
プラスチックが発明されたのは1800年台だそうですが、実際に製品として使われ始めたのは1900年代に入ってからで、1930年ごろには車のパーツとかに使われたり、ナイロンができてストッキングとかに使われ始めたようです。
あれ?ナイロンのストッキングってプラスチックなんですか?
プラスチックとは、一般的に、石油から作られた原料を元にしてつくられた「合成樹脂」のことを指していて、ナイロンのストッキングはこの合成樹脂からできた繊維、つまり合成繊維を使ってストッキングにしているので、プラスチックということなんです。
あ、合成繊維と呼ばれるのはプラスチックということなんですね、ではナイロンだけでなくポリエステルとかもプラスチックということなんですね?
そういうことになります。
なるほど、あ、ちょっと話がそれてしまいましたが、初期の頃に車のパーツとかナイロンストッキングにプラスチックが使われ始めて、それ以降はどのように増えていったのでしょうか?
実はですね、第二次世界大戦がきっかけとなってプラスチックの需要や消費がとても増えたそうなんです。
戦争ですか?
そうなんです。戦争で戦うためには、安くて、軽くて、耐久性があって、早く製造できる材料が必要で、アメリカはプラスチック製造業に1000億円を投資して、ロープ、パラシュート、軍服、テント、断熱材、タンク、ゴーグルなど様々なものを作っていったそうです。
そうだったんですね、日本は戦時中、金属不足になって武器を作るために、マンホールのふたやポストとか、お鍋や指輪なんかまで回収されたなんて話を昔聞きましたが、アメリカはプラスチックで戦争に必要なものを作っていたとはなんとも驚きです。
そうですよね。
ではこういった戦時中のプラスチックの開発のおかげで、戦後はプラスチック商品が爆発的に広まっていった、ということですか?
プラスチック商品が戦後、普通の生活に入っていくのは、実はそう簡単でもなかったそうなんです。
え、どういうことですか?
多くの人はプラスチック商品を使ってこなかったので別段、必要とも感じてなくて、需要がなかったようなんです。それで、困ったプラスチック産業は、販売戦略として主婦層をターゲットにして、女性週刊誌などに特集を組んで、サランラップやタッパーなどを使っているところを「これぞ新しい生活スタイル」、として紹介することで、プラスチック商品の需要を生み出していったそうです。
そうなんですか!女性が雑誌を見て、これいいね〜と言って買い始める姿、なんか目に浮かぶようです。
SNSが入ってきて状況は変わりましたが、以前はやっぱり雑誌の力は大きかったですよね。日本にいた頃は私も女性誌をしょっちゅう読んでいて、それに載ってる商品とかをよく買ってました。
そうですよね、懐かしいですね。
それ以降、1970年頃からは使い捨てのものにプラスチックが多く使われるようになっていったそうです。
使い捨て、ですか?
シングルユースとかワンウェイといった表現のされ方もしますが、一回使ったらもういらなくなるようなペットボトルとかレジ袋、ストロー、スプーンみたいなものが「使い捨てプラスチック」と呼ばれています。
昔はシャンプーとかにもガラスの瓶が使われてようなのですが、この頃にペットボトルに代わって、紙のレジ袋もプラスチックになって、肉類のトレーに白い発泡スチロールのプラスチックトレー使い始めたのものこの時期だったそうです。そして1970年代にはプラスチックは世界で一番使われる材料になったそうです。
なるほど、確かに使い捨てプラスチックだと大量生産大量消費とつながりますし、プラスチックの消費は増えそうですね。
そうなんですよね、ちょっとここでクイズをしたいのですが、世界のプラスチック生産量は1960年から今まで、この60年くらいの間にどれくらい増えたと思いますか?
1)5倍 2)10倍 3)100倍
え〜100倍はとんでもなく多そうなので10倍くらいでしょうか。
実は、約100倍に増えているんです。
え、それは確かにすごい増え方ですよね。これだけ生産が増えると必然的にプラスチックのゴミが増えるということですよね。
そういうことなんですよね。
ではここからはポイント2の「プラスチックのゴミの問題」の話に移りたいと思いますが、ちょっと聞くのが怖いのですが、プラスチックのゴミの問題はやっぱり相当ひどいのでしょうか?
相当ひどいと思います。
やっぱり・・・
今まで世界で 80億トン以上のプラスチックが作られてきて、毎年4億トンのプラスチックがゴミになっています。どれくらいの量かというと、東京タワー約10万個分の重さのゴミの量です。そしてその量は2050年までに3倍になると予測されています。
わぁ東京タワー10万個、それが3倍に増える?ちょっと想像を超える量ですね。
世界で膨大な量のプラスチックのゴミが出されてるということですが、やっぱりアメリカも日本もプラスチックのゴミの量は多いのでしょうか?
そうなんです、実はアメリカも日本もプラスチックゴミの量が世界のトップ10に入っているほど多いんです。
アメリカはもったいない文化がある日本とは違って、バンバン捨ててしまう感じがするのでのでプラスチックゴミが多いのはなんとなく想像できるんですが、日本もですか?
年間のプラスチックゴミの量はアメリカで一人当たり約100キロ、日本は約70キロもあるんです。1Lのからのベットボトルに換算すると、アメリカでは一人当たり約2000本にあたるプラスチックごみ、日本は約1500本分のゴミを毎年出していることになります
日本がそれだけ多くプラスチックを使ってるとは結構意外でした。
ところで、井口さん、プラスチックゴミの中でどんな種類のゴミが一番多いと思いますか?
ゴミの種類ですか???そうですね、やっぱりペットボトル系、いやレジ袋かな?
実はなんですね、タバコの吸い殻なんです。
え、タバコの吸い殻っていうのもびっくりですが、タバコってそもそもプラスチックなんですか・・・?
タバコの吸口の方のフィルターの部分はほとんどの場合、数字にして98%がプラスチックでできていて、現在およそ4.5兆個のタバコの吸い殻がプラスチックゴミとして世界中の環境を汚しているってことなんです。
うわ、それは色々驚きです。昔はほんと道端とか河岸とかタバコのポイ捨てが多かったような記憶がありますが、タバコを吸う人が減ってポイ捨ても減ってるようなイメージがあったのですが、
今でもポイ捨てされるゴミの中でダントツでタバコの吸い殻が多いそうです。
あ〜そうなんですか、ポイ捨てされると回収できないですし、4.5兆個ですか、これはかなり大きなプラスチック汚染ですね、驚きました。
他に多いのは、さっきお話した使い捨て、とかシングルユース、ワンウェイと分類されるプラスチック容器や包装類のゴミが多くなっています。
容器や包装類ですか、、、確かにスーパーに行っても日本でもアメリカでもお芋でもレタスでも冷凍食品でもマヨネーズでもヨーグルトでもほとんどの食料品がプラスチック容器に入ってますし、化粧品や日用品をみてもほとんどプラスチックの容器に入ってますよね、逆にプラスチック容器に入ってないのを探す方が難しいかもしれませんよね。
そうなんです、中でもアメリカ、日本はこういったプラスチックの容器とか包装のゴミの量が世界の中でも多くて、一人当たりだと、アメリカが世界1位、日本は世界2位の量なんです。
え〜そうなんですか!そんなに多いんですか!ハァ〜こういう分野が世界トップクラスとはちょっと嬉しくないですね・・・
そして実はアメリカと日本、ま、アメリカと日本だけではないんですが、プラスチックゴミが多すぎて国内で処理しきれなて、プラスチックゴミを海外に輸出して、他の国にゴミの処理をお願いしちゃっているんですよね。
ゴミの輸出ですか!?
そうなんです、昔は中国に多くを頼ってたんですが、世界中からプラスチックごみが中国に送られるようになって処理し切れなくなったので中国が輸入を禁止したので、今はマレーシアとかベトナムに頼っています。その輸出量もアメリカと日本は世界トップ3に入っているんです。
トップ3ですか!いやはや国の中で処理し切れないくらいのプラスチックごみが出ているというのは使いすぎということですね、アメリカも日本も。
使いすぎってことですよね
それではこのあたりで、最後のポイント「マイクロプラスチック」に移りたいと思うのですが、最近聞く回数が増えてきたように思うマイクロプラスチックですが、そもそもマイクロプラスチックとはどのようなものなんでしょうか?
広義の意味では、直径5ミリ以下のサイズのプラスチックのことを指します。でも大体マイクロプラスチックというと、海洋プラスチックゴミとセットで語られて、海の中にある直径5ミリ以下のサイズのプラスチックのことを言うことが多いかもしれません。
海に流れ着いた小さなプラスチックということですか?
というよりはポイ捨てされて海に入り込んでしまったペットボトルとかストロー、レジ袋とかタバコの吸い殻のようなプラスチックゴミが、波とか紫外線で細かく砕けて行って小さくなって行ったというものですね。
なるほど。5ミリというとかなり小さいですね。それだけ小さいと海の動物などが誤飲してしまったりもしそうですね。
そうなんです。実際に魚や貝、鳥などの体内からマイクロプラスチックが見つかっています。
わぁ、怖いですね。
そうですよね、そして一旦プラスチックゴミが海に入ってしまって、5ミリまで小さくなってしまうともう回収するのはほぼ無理で、海にどんどんマイクロプラスチックがたまっていっているのが大きな問題になっています。
海に入ってしまったらもう出口がないですからね、これは問題ですね。
マイクロプラスチックにはこういった海の中で砕けて小さくなったプラスチックの他にもマイクロビーズという小さなプラスチックでできた粒状のものがあって、洗顔料とか歯磨き粉とかにスクラブ剤として使われていたのですが、そういったプラスチックは小さすぎて下水処理のときに回収できずに、排水溝を通して川にいってそのまま海に流れ込んでいると言います。あと、さっき話した合成繊維の洋服も、着たり洗濯するたびに合成繊維が取れて行って、これもマイクロプラスチックになって、水や環境の中に放出されているとも聞きます。
そうなんですか!そう聞くとそこら中に小さなプラスチックがばら撒かれているような感じがしますね。
実は人間の肺や腎臓、肝臓からマイクロプラスチックが見つかったという報告があり、生まれたばかりの赤ちゃんの胎盤からも見つかったという報告もあります。まだマイクロプラスチックの人体への影響についてははっきりとした調査がないのですが、体内に入ってきていいわけがない感じがしますよね。
いいわけがない感じがします。
いやぁちょっと相当大きな問題ですね。歯磨き粉も使いますし合成繊維の服もきますし、どうしたらいんでしょうか。
そうですよね、私たちが着ている洋服の約7割は合成繊維、つまりプラスチックでできているそうなので、
7割!
そうなんです、マイクロビーズは規制が進んできていて、アメリカなんかでは2012年に五大湖で大量のマイクロビーズが見つかって以来、マイクロビーズを使った製品はもう売れないようになっています。
じゃ今の歯磨き粉にはマイクロビーズは入っていない・・・?
アメリカのはそうなっています。ただ日本ではマイクロビーズの使用は完全には禁止されていないので使われてる製品はまだあるかもしれません。
そうなんですか?禁止されてない国はまだまだあるということですか?
オランダ、韓国、フランス、イギリス、カナダ、台湾などの国では禁止されていますが、世界全体では禁止されていない国の方がまだ多いです。
そうなんですか、それでは問題解決には時間がかかりそうですね。
そうですよね。
さて今日は、プラスチック消費が戦争や婦人雑誌の特集がきっかけになって増えたことや、タバコの吸い殻と使い捨てのプラスチックゴミが一番多くて問題なこと、日本やアメリカのプラスチックのゴミが世界トップレベルに多いこと、そしてマイクロプラスチックやマイクロビーズの問題について話を伺いました。
本当に気づかないところにもたくさんプラスチックが使われていて知らぬ間に自分も色々なとろでプラスチック汚染に加担してしまっていることに気付かされました。ところで、アメリカではリサイクルも個人の自由のようなところがあって分別などがそもそもないところがあるのですが、プラスチックゴミはどうなってるのでしょうか?
そうですよね、私の住むインディアナ州の自治体でも、分別の義務は全くなくて、リサイクルをしたい場合は、基本のごみ回収の費用にプラスしてリサイクル用にエクストラでお金を払って回収してもらわないといけないので、残念ながらリサイクルがあまり進んでいないのが現実です。
アメリカ全体をみわたしても私の住んでいるところのような地域がほとんどなので、多くのプラスチックがリサイクルされることなく埋立地に行ってしまっています。実際、8割のプラスチックごみは埋立地に送られています。
8割ですか!じゃぁほとんどリサイクルされていない?
そうですね、残念ながらリサイクルされているのは全体の1割弱です。
ではアメリカではプラスチックゴミ問題に対してほとんど取り組みがされていないということでしょうか?
アメリカでは連邦全体で何か法律とかがあるわけではなくて、州や自治体に任されていることが多くて、私の住んでるところではレジ袋はまだ無料ですしいくらでももらえるので、それぞれの地域によって取り組みはまちまちですが、「使い捨てのプラスチックの使用を削減しよう」という取り組みはカルフォルニアが一番進んでいるように思います。
やはり!ちょっと前にロスの飛行場ではペットボトルに入った水はもう買えないと聞いて、わぁ進んでいるなと思っていました。
そうですよね、2019年にはサンフランシスコ空港でペットボトルの水の販売が禁止されてロサンゼルス空港でも禁止されましたよね。

カリフォルニアは他の州に先立って2018年にレジ袋の使用を法律で禁止しましたし、最近では使い捨てのプラスチックの販売を25%減らす法律、そして使い捨てプラスチックごみの65%はリサイクルするという法律も通しました。
他の州も早くカリフォルニアに続いてプラスチックの消費を減らしていってくれたらいいなと思いますが、個人としても、自分の使うものに意識を高めて、なるべく使い捨てのプラスチックは使わないようにしなくちゃなと思いました。
そうですよね、国や企業などが働きかけて、プラスチックの利用を減らしたりリサイクルするように動いていくことも大切ですが、そういった消費者として自分の使うものに責任を持つ、といった行為はとても大切で、限りある資源を守るために設定されたSDGsの12番目の目標「作る責任、使う責任」の使う責任の目標達成にもこういうことは大きく関係してきます。
なるほど、持続可能な社会を作るためは私たち、消費者の責任も大きいというですね。
そういうことになりますね。
今日はプラスチック問題についてのお話を伺いました。ありがとうございます。
第八回目
2024年9月23日放送分

食品ロス問題について
食品廃棄物が一番多い国って?余った食品が捨てられない国って!?ピーマンの種って食べれる!?天ぷら油で飛行機が飛ぶ!?などなど
ここから聞く↓
書き起こし
青字:ナビゲーター 井口由美
黒字:ゲスト 山口日出夏
8回目の今回は、食品ロスについてお話をしていただきます。今日もよろしくお願いします。私はシカゴでケータリングの仕事もしているので、今回のテーマについて話すのを楽しみにしていました。
そうでしたよね、ケータリングではやはりたくさん食べ残しがあって、捨てられちゃうって感じでしょうか?
ケータリングでは多めに作って余ったものは衛生上捨てなくてはいけない決まりがあるので捨ててしまいます。
私は、子供たちが小さかった時にお友達の誕生日会とかに付き添いでついていくときに、子供たちが食べ残したものをどさっと簡単にゴミ箱に捨てるのを見て、いやぁ〜もったいない!っていつも心の中で叫んでました。
私もです。なのでケータリングでは後ろでつまみ食いしてます(笑)。
さて本題に入る前に「食品ロス」という言葉の意味を確認しておきたいのですが、食品ロスとはどういったことを指すのでしょうか。食品廃棄物とは違うのでしょうか。
食品ロスとは、まだ食べられるのに捨ててしまってムダにしてしまったものを指しています。例えば、家での食べ残しとかスーパーでの売れ残りだとか、レストランでの食べ残し、今のケータリングの食べ残しなんかも食品ロスになります。
そしてここではだれがムダにしたかは関係なくて、私たち消費者だけでなく生産者が製品にするまでにムダにして捨ててしまったものなんかも食品ロスで、とにかく食べられるのに捨てられちゃった食品全てのことを食品ロスと呼んでいます。
なるほど。ではリンゴの芯のところとか、魚の骨とか、そういったもともと食べられないものは食品ロスには含まれないということですね?
そういうことになります、もともと食べられないものは食品ロスには入りません。そういった、もともと食べられなくて捨てる食品と、食べられるのに捨てちゃった食品この全部合わせたものが食品廃棄物になります。
なるほど。まだ食べられるのに捨てられてしまうものが食品ロス、これは英語ではfood lossと呼ぶのでしょうか?
いいポイント、ありがとうございます。この日本語と英語がちょっと厄介で、「食品ロス」、英語に直訳すると「Food loss」ですよね、でも実はこの日本語の食品ロスと英語のFood lossが指しているものが異なっていているんです。そして「食品廃棄物」は英語に直訳すると「Food waste」ですよね、これも日本語と英語が指しているものが異なるんですよね。
え、どういうことなんでしょうか?
世界一般、ここではFAO(国連 食糧 農業機関)での定義を使いますが、英語での「Food loss」とは、「お店や消費者に届く前に捨てられてしまった食品」全部のことを指します。
お店や消費者に届く前に捨てられてしまった食品・・・ですか。
例えば、生産過程や流通過程で傷んだり腐ってしまったり、色や形が悪かったりして売られる前に捨てられてしまった食品のことです。
あ、なるほど。
そして、消費者が買いすぎたり、お店で売れ残ってしまって捨てられてしまった食品やレストランでの食べ残しなどは、「Food waste」と呼ばれています。
それはだいぶ日本と世界では定義が異なりますね。Food wasteはよく聞く身近な単語な感じがしますが、これが消費者やお店やレストランによって捨てられた食品だけのことを意味する、ときっちりとした定義があるとは全く知りませんでした。
そうなんですよね、今FAOでの定義を紹介しましたが、実は国によって言葉の定義も異なったりするので、データを見るときは何を指しているのか注意が必要になってきます。
今回は世界の現状を広くお話しできれば、と思っているので、日本語の食品ロスだけにフォーカスをあてずに、すべての捨てられてしまう食品、つまり食品廃棄物全体について話を進めていければなと思っています。食品廃棄物は英語では「food loss and waste」、頭文字を取って「FLW」と表記されることが多くなっています。
なるほど、食品廃棄物は正確にはfood loss and waste、FLWと訳すんですね。日本と世界では定義が異なることがわかり興味深いです。さてここで本題に移って行きたいと思いますが、今日は2つのポイントからお話をしていただきます。ポイント1つ目は「世界の食品廃棄物の現状」、ポイント2つ目は「食品廃棄物を減らす取組」になります。
ではまずポイント1つ目の「世界の食品廃棄物の現状」に移りたいと思いますが、捨てられてしまってる食品、多そうですね。
ではまたいつものようにちょっと軽くクイズをしたいと思うのですが、これから5つの国を挙げるのでその中で、一人当たりの食品廃棄物が一番多い国を当ててもらいたいと思います。人口が多ければ当然量は多くなるので、一人当たりでの量でいきたいと思います。
わかりました、一人当たりの食品廃棄物ですね。
1)アメリカ 2)中国 3)メキシコ 4)ナイジェリア 5)日本
え〜どうなんでしょう?話の流れからもアメリカでしょうか?
だと思いますよね。実は答えはナイジェリアなんです。
ナイジェリアですか!?え、この中で一番少ないのかなと思っていました。
そうですよね。ナイジェリアは実は、貧困に苦しんでいる人の数がインドに続いて世界で2番目に多い国なんです。
え、それだと貧困と捨てられる食品の量が余計に結びつかないのですが。
井口さん、ナイジェリアは農業国っていうのはご存知でした?
確かナイジェリアは農業が盛んでお米を作っていて、生産量がアフリカで一番多いっていうのを聞いたことがあります。
よくご存知!その通りなんです。人口の半分は農業で働いていて、今おっしゃられていたようにお米やヤムイモ、カカオ豆とかごまを生産していて、実は、日本は大量のごまをナイジェリアから輸入しているんです。
日本のごまってナイジェリアから輸入されているんですか!?ごまってほとんどが国産かと思っていました。
ですよね〜実は日本でのゴマの自給率は0.1%で、1%もないんです。2022年のデータでは、一番多くのごまをナイジェリアから輸入していてその額も110億円分と大量です。
そうなんですか、それは驚きました。そしてナイジェリアでの一人当たりの食品廃棄物の量が世界一多いとのことですが、どの過程食品が捨てられてしまう食品の量が多いのでしょうか。
お店や消費者の手に届く前の生産過程や流通過程で失ってしまう食品の量が多いんです。
あ、先ほど聞いた英語でのfood lossということですね。
その通りです。ナイジェリアではまだインフラがしっかり整っていないところが多くて冷蔵や保存システムが整っていないので、収穫した野菜などが保管中に虫とかネズミに食べられちゃったりするそうです。またクール宅急便みたいに冷蔵して輸送する物流システムも、食品が痛まないようにパッケージする包装システムも整っていないので、長距離の移動中に傷んでしまう量がとっても多くなってしまっています。そういったことのせいで収穫したもののうち、40%はダメになって捨てられてしまっているんです。
そういうことなんですね。せっかくつくったのにそういう形で消費者に届く前に食品を失ってしまうのは本当に残念ですね。
先ほどのクイズに挙がっていた他のアメリカや中国、メキシコ、日本などの食品廃棄物の量はどうなんでしょうか。
ナイジェリア一人当たりの食品廃棄物の量は年間で約190kgなんですが、アメリカは180kgで、実はそうナイジェリアと変わらない量で、この5カ国の中で2番目に食品廃棄物の量が多くなっています。そして日本がその次で130kg、そしてメキシコ94kg、そして中国が最後でちょうど世界平均あたりの75kgになってます。
中国がちょうど世界平均あたりってことは、日本は世界平均より多いってことですね。
そうなんです。世界平均が75kgで日本が130kgなので、日本の一人当たりの食品廃棄物の量は世界平均の倍近い量があります。
結構多いですよね、ちょっと意外です。どんな種類の食品廃棄物が多くなっているのでしょうか。
その食品廃棄物130kgのうち、食べられるけど捨てられてしまう食品ロスの量はおよそ40kgなので、ま、ざっくり言うと、食品廃棄物の3分の2は魚の骨などもう食べられない食品で、残りの3分の1がまだ食べられるのに捨てられてしまっていることになります。
ナイジェリアでは消費者の手に渡る前にダメになってしまう食品が多かったとのことでしたが、日本ではどうなのでしょうか。
とてもいい質問ありがとうございます。先ほど言ったようにナイジェリアのような開発途上国では、インフラが整ってないために食品の鮮度を保つことができなくて、収穫後や輸送中にダメにしてしまう食品が多いのですが、それに対して日本のような先進国では、アメリカもそうなんですが、そういったことで捨てられてしまう食品の割合は少なくて、反対に消費者の手に渡った後に捨てられてしまう割合が多くなっています。
あ、つまり買ったけど食べきれずに捨ててしまうようなことですか。
その通りです、料理を作りすぎて残っちゃって捨てる食べ残しとか、買ってたのを忘れてて賞味期限が過ぎちゃって未開封のまま捨てちゃったり、りんごとかの皮とかを厚くむきすぎて食べれるところまで捨てちゃったりとか、そういった消費者の行動によって食品が捨てられてしまう量が日本やアメリカのような先進国では多くなっています。
確かに、そうやって捨ててしまう食品かなりありますよね、ちょっと耳が痛いです。皮を剥きすぎて食べれるところまで捨てちゃうことあります。そういえば、以前、友達からシイタケの石づきが、先の固い部分だけ取り除けば全部食べられるというのを聞いて、それから石づきをお味噌汁に入れるようになりました。
いいですね、なんかピーマンも種ごと食べられるそうですよ。
え、そうなんですか?ピーマンの種、必ず取ってました。
そうですよね、私もそうでしたが、ピーマンなんかは種の方が栄養素が高いそうですよ。
そうなんですか、ちょっと今度、種ごと使ったレシピ探して作ってみたくなりました。
私もやってみます。
ではちょうどタイミングもいいのでここら辺で、ポイント2の「食品廃棄物を減らす取組」の方に移りたいと思いますが、今のピーマンの種やシイタケの石づきを食べることも食品廃棄物を減らす取組の一つだと思いますが、他にどんな取組があるのでしょうか?
先ほど出てきたナイジェリアなんかでは、インフラを整えることで食品廃棄物を減らそうとしています。
例えばここではColdhubsという会社の取組を紹介したいのですが、この会社は冷蔵システム付きの倉庫を、農地とか市場の近くに60件ほど設置していて、そのスペースを農家の人にレンタルしています。クレート単位でレンタルできて、その価格も一日30セントとかなりリーゾナブルになっていて、今では6000人以上の人がそうした冷蔵付きの倉庫を借りていて、食品を新鮮に保つことができるようになってるそうです。そしてその電気はソーラーパネルを使って太陽光で発電しています。
それは素晴らしい事業ですね。しかも太陽光発電でそういった倉庫をつくるというのは新しいといった感じですね。
そうですよね。アフリカなどの多くの地域では、電気をつくるために大きな発電所をつくって電線を引いて電気を送電する、というようなお金がないために、電気が未だに利用できないといった地域が多いので、このソーラーパネルのように発電所を必要としなくて、太陽の光さえ当たれば電気がつくれるというシステムは、このような地域には最適な発電方法といえると思います。
しかも再生可能エネルギーなので二酸化炭素を排出しないので環境にもいいですしね。まさにSDGsですね。
他にも取り組み例はありますか?
今度は先進国の例になりますが、フランスでは、2016年に世界で初めて、スーパーでの食品廃棄を禁止する法律がつくられています。
スーパーでの売れ残りを捨てることを禁止するということですか?
そういうことになります。
ではスーパーで売れ残ったらどうするんでしょうか?
売れ残ったものは、食べ物に困ってる人に寄付したり、バイオ燃料につくり変えたりしてゴミにならないようにしています。
Food bankですか?
あ、その通りです。Food bankのボランティアの人たちがスーパーから売れ残った食品を回収して、食事に困った人たちに寄付を行なっています。
食品のムダも減って困った人たちを助けることにもなるいい取り組みですね。
フランスの例を見習ってイタリアやメキシコや南アメリカでも同様の政策がとられているそうです。
アメリカでの取り組み例など何かありますか?
アメリカではフランスのように食品廃棄を禁止したりする法律はありませんが、スーパーやレストランや農産地でムダになってしまった食品を自主的にFood bankなどに寄付する活動はみられます。
あと、これはオランダ発の会社なんですが、Too good to goというサービスもあります。
アプリをダウンロードして、自分のいる場所を登録すると、つくりすぎて余ってしまった食事を格安で買える近所のレストランとかスーパーの情報が得られます。
おもしろいサービスですね、かなり興味あります。
私も興味があってダウンロードしてみたんですが、私の近所ではこのサービスを使ってるところがなかったので、先日マイアミにいった時に使ってみたのですが、朝食サービスをしているホテルで、その朝食後に余ったチョコクロワッサンとかを22個、普通に買うと30ドル分ぐらいのパンが6ドルで買えて、すごいお得感があってちょっとクセになりそうでした。


22個で6ドル!それかなりいいですね。
ホールフーズもToo Good to Goのサービスをやっててちょっと試してみたかったんですが、ピックアップがお店が終わった夜の10時から11時で、ちょっと遅すぎて行けなかったんですがで、ホールフーズも定価の三分の一くらいの価格だったのでとってもお得だったと思います。
でも、何の食事がくるかわかない、しかも量がちょっと多いっていうのがあるので、人を家に呼んでパーティーした時とか、持ち寄りパーティーなんかがある時にはすごくいいんじゃないかなって思いました。
それは消費者には嬉しいサービスですね、そしてさらに捨てられる食品も減るということで。Too good to goでしたよね?ちょっと私の住んでいる近くにもあるのかちょっと調べてみたいと思います。
では最後になってしまいましたが、日本の取組はどうなんでしょうか?
日本は「食品ロス削減推進法」と「食品リサイクル法」いう2つの法律をつくって、食品ロスの削減に取り組んできていて、消費者や事業者に対して、食品ロス削減に関する知識の普及や啓発を行ったり、食品廃棄物のリサイクル利用を推進したりしています。
食品廃棄物のリサイクル利用ですか?
家畜の飼料や肥料などに利用したり、バイオ燃料などにして廃棄物を資源としてまた利用したりするという取組です。
以前、使い終わった天ぷら油を集めて、バスの燃料にしているというニュースを見たことを思い出しました。
そうですよね、まさに食品廃棄物のリサイクル利用ですよね。天ぷら油をリサイクルして、バスとかゴミ収集車の燃料にしたり、今では飛行機のジェット燃料になったりもしています。
飛行機もですか?
二酸化炭素の排出削減のために、現在はSAF(サフ:Sustainable Aviation Fuel)と呼ばれる石油を使わないジェット燃料の開発が迫られていて、こうした天ぷら油もSAFとして利用されています。
一度使った天ぷら油で飛行機が飛ばせる、とはなんか不思議な感じがしますが、色々なものがムダにならずにまた資源として使える循環型社会の方に進みつつある感じがします。
さて、今日は「世界の食品廃棄物の現状」と「食品廃棄物を減らす取組」の2つのポイントからお話をいただきました。わたし個人としては、〜〜〜の点が〜〜〜でとても印象に残りました。
すっかり冒頭で聞き忘れてしまいましたが、この食品廃棄物の分野はSDGsのどの目標にあたるのでしょうか?
SDGsの12番目の「つくる責任つかう責任」という目標の中に「2030年までに、お店や消費者のところで捨てられる一人当たりの食品の量を半分に減らす。また生産者からお店への流れの中で食料が捨てられたり、失われたりすることを減らす」というターゲットにあたります。
一人当たりを半分に減らすということですね。家庭でもできることが多そうなので、今日から少し見直してみたいと思います。
さて次回は、目標11の「住み続けられるまちづくり」についてお話ししていただく予定です。今、日本で南海トラフ地震への警戒が高まっていますが、実はそういったこともこの目標に関係していてお話ししていただく予定です。
今日も貴重なお話ありがとうございました。
第九回目
2024年10月7日放送分

住み続けられるまちと南海トラフ地震について
日本で唯一人口が増えてる都道府県はどこ?アメリカも少子高齢化してる!?「地震だ、火を消せ」はもう古い!?日本は防災先進国!?などなど
ここから聞く↓
書き起こし
青字:ナビゲーター 井口由美
黒字:ゲスト 山口日出夏
9回目の今回は、目標11の「住み続けられるまちづくりを」についてお話をしていただきます。
今日もよろしくお願いします。
日本は人口減少が進んでいて、こないだもニュースで、学校がどんどん統廃合されて減っていて、小学生が20キロ以上も離れた小学校に通うことになったというニューみて心が痛んだんですが、こういったことはこの住み続けられるまちづくりの目標にも大きく関係してくると思いますが、実際問題、日本はどれくらい人口が減ってきているのでしょうか。
日本は2008年に今までで1番多い人口を記録して1億2800万人いたのですが、その後13年間連続して減少していてこの期間におよそ370万人減りました。
370万人ですか、私が今住んでいるシカゴが約270万人なのでそれより多いですね。
静岡県の人口が約350万人なので静岡の人がごそっと日本からいなくなってしまったのに匹敵する減り具合になってます。
そう考えるとすごい数が減ってしまいましたね。しかも13年ってだいぶ短い期間ですよね。
そうなんです、急激に人口が減っているのも日本の特徴なんです。でも一都道府県だけで2年連続人口が増えているところがあるのですが、どこだと思います?
あ、これ、わかると思います。沖縄では人口が増えていると以前聞いたことがあるので沖縄ですか?
あ、そうですね、少し前までは沖縄が自然増加によって、人口が増えていた県だったのですが、実は、2022年から自然減少に転じてしまって、今では人口が減ってきてしまっています。
あ、ちょっと情報が古かったようですね?自然増加とか自然減少とか少し聞き慣れない単語が出てきたので、ちょっと確認してもよろしいですか?
自然増加とは生まれた赤ちゃんの数が亡くなった人の数がより多いことを指し、それに対して、自然減少とは亡くなった人の数が生まれた赤ちゃんの数より多いことを指しています。
なるほど、ということは、ちょっと前までは沖縄では生まれる赤ちゃんの数が多くて人口増加していたのが、沖縄でも減少に転じてしまったということなんですね。
クイズの途中なんですが自然増加している都道府県っていくつあると思います?
え、どうなんでしょう?生まれる赤ちゃんの数が亡くなった人の数がより多い県ってことですよね、う〜ん、5県ぐらいあるんでしょうか?
実はですね、自然増加している県は一つもなくて、すべての都道府県で自然減少しているんです。
え、全てですか?え、なんかすごくさみしいですね。
え、じゃぁさっきのクイズ、一つの都道府県で人口増えているっていうのはどういうことなんでしょう?
答えを先に言ってしまいますが、日本の中で唯一人口が増えているのは東京都なんです。
でも東京も自然減少しているんですよね?
そうなんです、東京都もここ10年以上自然減少し続けているんですが、社会増加の数が多くて人口が増加しているんです。
社会増加、ですか?
新入生とか新社会人とか転勤・転職、外国人の移住などによって、転入してくる人の数が転出する人より多いということなんですね。
あ〜なるほど!つまり東京に移り住む人が、自然の人口減少をカバーするほど多いってことなんですね。
そうなんです。
でもコロナによって東京から脱出して移住する人が多いって聞いたことがあったので、なんか意外なんですが。
そうですね、井口さんが今おっしゃったように、コロナのピークの時は多くの人が東京から出ていって、東京に入って来る人は減ったので、2021年の時は20年以上ぶりに東京の人口が減少したのですが、その翌年の2022年にはまた転入者が転出者より多くなって、増加に転じています。でも実はコロナ前の状態にはまだ戻ってなくて、コロナ前よりも多くの人が東京から出て行っていているのは事実です。
そうなんですね、やっぱりコロナをきっかけに東京から転出する人が多くなったんですね。
コロナによってリモートワークが普及したのもありますし、多くの人の働き方だけでなく、暮らし方や価値観を変えて、東京から離れて住もうと思う人が増えたのと、また地方の側も地方に来てもらおうと地方移住を進める取組が増えてきたのも理由だと思います。
で、もう一つ東京の人口について付け加えておきたいことがあるのですが、先ほど東京は人口が増えている唯一の都道府県といいましたが、実は日本人だけで見ると、東京の人口も減少しているのですね。
え、どういうことですか?
日本人だけで見ると社会増加だけでは自然減少をカバーし切れてなくて、去年も東京の日本人の人口は1年間に1.5万人減っています。
あ〜外国人ですか?
そうなんです、去年は外国人が6万人ほど移住してきていてそのおかげで人口が増えていて、もし外国人が移住してこなかったら東京ももれなく人口減少の一途になってます。
最近日本に帰るたびに外国人の割合が多くなってきたような気がしていましたが、そのことで東京の人口が増加できているということは全く知りませんでした。
ちなみに去年、日本に移住してきた外国人は24万人いて、日本に住んでいる外国人は320万人ほどいて過去最高の数だそうです。
なるほど。そしてこうした人口減少に加えて少子高齢化も問題になっていますが、日本の出生率の方はやはり下がり続けているんでしょうか?
2023年の出生率は1.20で過去最低で、世界でみても212ヵ国中199位の低さでした。去年生まれた赤ちゃんの数は約72万人なんですが、第一次ベビーブームの時は一年に270万人の赤ちゃんが生まれてたので、そこから比べると3分の1とか4分の1ぐらいに減ってしまっています。
3分の1とか4分の1!だいぶ減っていますね。
そして日本の高齢者の割合も過去最高になっていて、人口のうち65歳以上の人は約30%、80歳以上は10%で、日本の高齢者の割合は世界トップになっています。
10%とは10人に1人が80歳以上ということになるんですね。ちなみにアメリカの人口構成の方はどうなんでしょうか?
アメリカの出生率も実は高くなく1.67で、2を切っていて、実はアメリカの人口も自然減少しています。でもアメリカに移住してくる移民が多くて社会増加が多いので、年平均450万人ほど人口が増えています。
そうなんですね、高齢者も日本のように増えてるんでしょうか。
そうですね。こういった出生率の低下や高齢化は先進国と呼ばれる国ではどこでも起きていて、アメリカも例外ではなく、高齢者の割合が2000年のころは12%だったのですが現在は17.5%になって高齢化が進んでいます。でも日本の29%と比べると高齢者の割合はまだ少なくなってます。
長生きできる日本はいいことで誇らしいことだと思いますが、やはり子供が減って高齢者の割合が増えたり、地域に住む人の数がどんどん減少していくとなるとやっぱり住んでいる街の形態は変わっていきますよね。
その通りなんです。やはり人口が減ってしまって過疎化してしまうとどうしても今までのようには暮らせなくなってしまいますよね。でもこういった過疎地の問題は実は今に始まったことではなくて、若者が都市に大量に移住するようになった高度経済成長期の1960年代あたりから、日本は過疎の問題を抱えてきています。
あ、確かにそうですね。無医村とかの過疎地の問題をずいぶん前から耳にしていますね。1960年というとざっと60年以上日本はこの過疎の問題と付き合ってきていることになりますが、何か変化は見られるのでしょうか。
そうですね、今までは日本全体の人口が増えていたのですが、今では東京を除いてどの県でも人口が減少していて、自然減少もして社会減少もしているというダブルで減少している県は実は25県もあるんです。
25県ですか、半分以上ですね。多いですね。
そうなんです。なので過疎地になってしまう地域も増えてしまって、人口の少ない市町村は色々合併とかしてきてますが、それでも日本にある半分以上(51.5%)の市町村が過疎地になってしまっています。
え〜そうなんですね。
そして昔は過疎地でも子供はそれなりにいて、65歳以上の高齢者は7%と1割もなかったのですが、今では過疎地の高齢者の割合は4割まで増えていて、5人に2人は高齢者になっているので、地域経済が縮小して、機能不全に陥る地域が後を絶たなくなっているため、そのようなまちをどうしていくのかが大きな課題になっています。
人口が減って空き家が増えて、治安が悪くなったり、火災のリスクが高くなったりという問題を聞いたりしますが、人口が減って少子高齢化になっても住み続けられるまちをつくっていくのになにかいい方法はあるのでしょうか。
そうですね、成功している地域のなかで、富山県の富山市でのコンパクトシティという取組があります。
コンパクトシティですか?
富山市では人口が42万人と比較的大きな都市ですが、やはり富山市でも人口が減少し始めていて、高齢者の割合も3割と増えてきています。そして日本の多くの都市で見られるように、人が住んでいる場所が郊外へ郊外へと広く分散してしまうという、都市のスプロール現象が進んでいて、そういった郊外は大抵車しか移動手段がなくて、車の運転ができない高齢者などが移動しにくくて生活が成り立たないなどの問題が起きていたのですが、そうした問題に対し、富山市では2013年から「コンパクトシティ」を提唱して、広がりすぎた街をこの名前の通り、コンパクトにまとめようとしています。実際には、街の中心に路面電車やバスなどの公共交通を充実させて、その周りに居住地とか生活に必要な諸機能を配置するようにして、街をコンパクトにつくり変えています。
コンパクトシティ、ですか。アメリカも大都市以外はほとんど車がないと移動できないような街が多いですよね。
本当にそうですよね。私も25年ほど前にバージニア工科大学に留学した時にアメリカに初めて住んだのです、最初来たときは、街のつくりがあまりに広がってて、なんかたくさんのサイコロを手の中で振って、それを机にばら撒いたような街のつくりだなぁってびっくりしたのを思い出します。私は神奈川の横浜で育ってほとんどの移動が電車だったので、どこにいくにも車かバスでしか移動できないのにすごく不便だなって思いました。
わかります。車でしか移動できないから、アメリカでも高齢者になると車を使えなくなって移住して行く人もいますよね。
そうなんですよね、なのでアメリカでもコンパクトシティに移行していこうっていう動きもあるんですよね。
そうなんですか!?
特に今SDGsで二酸化炭素を減らしていなかくてはいけないっていう方向に向かっていて、こういった広がった街のつくりは、やっぱり車の利用によって二酸化炭素の排出が多くなってしまうので、そういったこともコンパクトシティの追い風になっていて、カリフォルニア大学のデービス校などからは、コンパクトシティに移行していくことで2050年までに300兆円($2 trillion)のお金を削減できるから移行していこうよ、というレポートも出されています。ちなみに富山市では実際に車を必要とする人の数が減って、二酸化炭素の排出削減にも成功しているそうです。
なるほど、アメリカでは二酸化炭素排出削減の方向からコンパクトシティを進めようとしているはとても興味深いですよね。
さてまた日本のことに戻りますが、日本ではこのSDGsの「住み続けられるまちづくりを」の目標を達成するために、こうしたコンパクトシティのような人口減少や少子高齢化に対応するまちづくりを中心に行っている、ということなんでしょうか?
実はこれだけでなく、日本は、自然災害が発生しやすい国土となっているため、災害に強いまちをつくっていくことも重要課題になっています。
なるほど、確かに日本は地震とか台風、津波、火山などの災害が多いですよね。アメリカのMidwestに住んでいると、地震や火山や津波がないのが日本とだいぶ違うなと思います。
逆にトルネードやサンダーストームは多いですけどね。こないだの8月の頭もちょうど家族で旅行に出かけていた時に家のすごく近くをトルネードが通って、家に帰ったら庭のフェンスが壊れて吹き飛んでましたし、プロパンガスが入った重いバーベキュー用のグリルも倒れて中が飛び出ちゃって大変なことになってしまいました。
わぁそれは大変でしたね。でも家を直撃しなくて本当によかったですね。
近所の人たちがあまりの風の強さで死ぬかと思ったと言ってたくらいなので、モノがちょっと壊れたくらいで済んで本当よかったです。
大きな被害がなくて本当によかったです。
アメリカの中西部は日本と違ってトルネードやサンダーストームの自然災害が多いんですが、日本は今は南海トラフ地震がかなり怖いですよね。8月に宮崎で震度6の地震が起きて、その後、初めての巨大地震注意が出されたと聞いて、すごく心配になりました。
そうですよね、その注意が出された後に、愛知に住む友達がLINEでスーパーの写真を送ってきてくれたんですけど、日用品の棚がすっからかんになってました。先週も日本に1週間帰ってたんですけど、防災グッズが楽天のランキングのトップの方にあって、南海トラフ地震の存在をかなり身近に感じました。
「普段より数倍発生する可能性が高まった」と聞かされたら「防災グッズだけでも」と確かにそうなりますよね。
なんだか一部の地域では震度7になって、九州から関東の太平洋側の広い範囲で10mを超える大津波が起きる可能性がと聞いたんですが。
南海トラフ地震が起きると約32万人の人が死亡や行方不明の被害に遭うと想定されていて、これは東日本大震災で実際に起きた規模の17倍、ととてつもなく多い数になっています。
いやぁそれは大変なことになりますね。
でも日本はたびたび巨大地震に襲われているので、地震のたびに防災の力をあげてきていて、阪神淡路大震災や東日本大震災で全壊した家の数は、関東大震災の時の半分以下だったそうです。
関東大震災からしっかり教訓を得ているってことですね、素晴らしいですね。確か去年は関東大震災から100年でしたよね。
そうでしたよね。その関係で色々記事も上がっていて読んだんですが、関東大震災はお昼どきだったことから火を使ってて色々なところから出火したとは知っていたのですが、地震で亡くなった方の9割が火事が原因で、数にして10万人近い人が四方八方を火に囲まれて逃げられなくなって亡くなったそうなんですよね。
そうだったんですね。大勢の方が犠牲になってしまいましたね。
なのでそれ以後、ガスや石油ストーブの対策が進んで、震度5以上の揺れが起きたら自動的に止まってくれる家電が生まれたのもこの関東大震災の経験から生まれて、防災に生かされているんですよね。
「地震だ、火を消せ」が標語になっていたのを思い出しますが。
これも関東大震災の教訓から生まれたそうなんですが、今は、震度5以上の地震が起きたら、自動的にガスの供給自体が遮断されるそうなので、揺れを感じたら火を消しに行くのではなく、身の安全を確保するのが最優先といわれています。
え、地震を感知したら、自動的にガスの供給が止まるんですか。それは火事に対してかなり効果が高そうですよね。
ですよね。今ではほとんどの学校や公共施設は耐震設計になっていますし、高いレベルで防災訓練したりと、日本は今までの災害から色々なことを学んで、防災に生かしてきていて、こうした日本の防災の力は、世界でトップレベルになっています。
世界でも、地球温暖化などの気候変動によって、避難したり移住したりしなければならないような深刻な自然災害がこれからどんどん増えていくといわれているので、日本の防災力も世界でもいかせそうですね。
そうなんです。日本の防災の知識や経験は「仙台防災枠組2015-2030」としてまとめられていて、SDGsでも防災の指針として取り上げられているので、日本が今までの災害から学んできたことはSDGsを通じてこれから世界でも広く活用していってもらえることになると思います。そして、これからは日本でも世界でも増えていくであろう災害に対して、災害の被害を受ける人の数を減らすような取組、そして、災害にあってしまったら災害前よりも災害に強い状態に再建して「より良い復興 (build back better)」ができるような取組をどんどん増やしていくことが重要課題になっています。
今回は、SDGsの目標11の「住み続けられるまちづくり」についてお話ししていただき、日本の人口減少や少子高齢化問題に対してそういったことに対応できるようにまちをつくり変えていくことや、災害に対して災害に強いまちをつくっていくことがこの目標の中に掲げられているというお話をお聞きしました。
災害に多くあってきたからこそ日本は世界のリーダーとして防災力を発信できるという強みを持っているということに強く感銘を受けました。
大きな災害に見舞われても何度も立ち上がってきた日本は本当にすごい国だと思います。
同感です。
今日も貴重なお話ありがとうございました。次回はSDGsの4番目の目標「質の高い教育をみんなに」について、教育についてのお話を伺う予定です。お楽しみに。それではまた。さようなら。
第10回目
2024年12月2日放送分

教育について
サクララジオのPodcastから聞く
日本の学力は世界何位?アメリカの個人主義は教育にも反映してる!???日本の教育熱心はどこからきた?日本の教育はうらやましい!?など
ここから聞く↓
書き起こし
青字:ナビゲーター 井口由美
黒字:ゲスト 山口日出夏
10回目の今回は、SDGsの4番目の目標「質の高い教育をみんなに」についてお話をしていただきます。教育は私を含め、多くの人が興味のあるテーマだと思います。
ひでかさんは日本でもアメリカでも教育を受けられてきて、お子さんはアメリカで育てられてきているので、そういった視点からもお話を伺えればと思っています。
今日もよろしくお願いします。
こちらこそ、よろしくお願いします。
今日はSDGsと教育について話なので、まず基本的なところからお聞きしたいのですが、教育におけるSDGsはどういったことを目標にしているのでしょうか。
そうですね、まずSDGsでは、世界中すべての子どもたちが小学校や中学校に通えて質の高い教育を受けられるようにしようとしています。これはSDGsの前身のMDGs(ミレニアム開発目標)から引き継いだ目標でもあるんですが、現在、世界には小1から高3までの学齢期の子で学校に通えていない子どもたちは2.5億人ほどいて、そのうち小学校にも通えていない子どもたちが約7千万人もいるので、そういった子どもたちが2030年までに無料で教育を受けられる体制を整えることが教育分野のSDGでは大きな目標として掲げられています。

小学校に通えない子どもが7千万人ですか。えっとこれは世界の子どものどれくらいの割合になるんでしょうか。
11人に1人なので、世界の子どもが30人一クラスだとするとそのうち3〜4人の子どもたちが小学校に行けないという割合になります。
でもこれにはかなり地域差があって、アフリカの南スーダンでは6割以上の子どもが小学校に通えていないんですよね。
なるほど、6割となると5人のうち3人になりますからかなり多いですね。南スーダンとは、確か世界で一番新しい国でしたよね。
その通りです、南スーダンは2011年にスーダン共和国から独立してできた国なので、国としては13才で世界で一番若い国なんですが、40年以上もずっと内戦が続いている状態なので、学校が破壊されてしまって授業ができる状態になかったり、国自体がかなりの貧困状態にあるので、生きていくために武装グループに入らざるを得ない子どもたちが2万人以上いるという状態のため、教育を受ける機会を失っている子どもたちが大勢いるという状態なんです。
記録的な自然災害も起きて深刻と聞きましたが。
そうですね、南スーダンではこういった問題の上に、カヌーで移動しなくちゃいけないほどひどい洪水も定期的に起きてしまっていて、家を失う人も多くて、国民の5人に1人は難民になってしまっている状態です。

子どもたちの教育状態を改善したくても、貧困問題や内戦、洪水といった問題にはばまれて進められなくてなかなか子どもたちを学校に行かせることができないと問題が複雑ですね。
本当にそうなんです。
SDGsは17の目標があってそれぞれが独立した目標のように見えますが、実は色々な課題がそれぞれ深く関わっていて、今お話した南スーダンの子どもたちの小学校の就学率が低いなら、「じゃぁ学校をつくって子どもたちを通わせればいいじゃないの?」とそう単純には問題が解決するわけではなくて、貧困の問題や紛争の問題、自然災害の問題も解決しないと南スーダンの全ての子どもたちを学校に通わせることはできない、ということになるんですよね。なので、教育状態を改善するには全方向からのアプローチが必要になっているんです。
そうなんですね、そうなると日本でほとんどの子どもたちが学校に通えているという状態が今まで当たり前のように感じていたのが、何か特別なように感じてきました。
そうですよね、日本のほとんどの子どもは家庭が貧しいからと家族のために学校に行かないで働いたりしなくてもよくて、近くに安全に通える学校があって、小学校・中学校と就学率はほぼ100%、高校も95%以上という状態は、世界の2.5億人の学校に行けない子どもたちから見たらとてもうらやましいことなんだと思います。しかも授業料を払わなくて無償で高水準の教育を受けられるってことは、こういう南スーダンの状況を見ると本当にすごいことだと思います。
日本の教育が高水準と聞いて今思い出したんですが、私の実家は山口県にあるのですが、何年か前に日本に帰国した時に、近くの大学がNPO とコラボして行っている国際協力の農業支援プログラムに参加するために日本に来ていたミャンマーからの家族に会ったことがあったのですが、日本の教育システムがとても良くて子どもを日本で教育させたいからこれを機にミャンマーから移住したと聞いたのを思い出しました。
三年に一回、PISAという15才を対象にした国際学力調査があって、OECDに加盟している国の数学、国語、理科の3教科の学力を測っているのですが、去年の日本の三教科の総合得点は世界第3位だったので、子どもにいい教育を受けさせたいから日本に移住させたいっていうアジア圏の人たちがいるのはわかりますよね。しかも日本は義務教育は無償で受けられますし、それに加えて最近では幼稚園や保育所が無償化したり、私立高校でも実質無償化が始まっていて、大学でも無償でいける生徒の枠が増えていますし、そういう意味でも日本で教育を受けるのは魅力的なことだと思います。
日本の学力は世界第3位だったんですね、なんかゆとり教育で学力が下がったなんて時期がいっときあったように記憶してるのですが、3位ですか、それはすごいですね!
ちなみに一位はどこだったのでしょうか。
一位はシンガポール、2位が中国、3位が日本と台湾で5位が韓国でした。
あ〜なるほど上位はアジア勢が占めているんですね、なるほど。
ところで、日本の就学率が高くて学力も高い、こういった今のような教育水準の高い状態になったのには何かきっかけのようなものがあるのでしょうか。
そうですね、この教育水準の高さは、日本人が教育に対して熱心な国民性を持っていて、そういった教育熱心さは、江戸時代に広まったように思います。
江戸時代ですか?
それまでの教育、いわゆる学校の様なところで学ぶという形の教育は、社会の上の層の人たちだけが受けて、そういったところでは、中国から伝わった儒学とか兵学とか、いわゆる高尚な学問が教えられていて、ほんの一部の人たちだけに開かれたものだったのですが、江戸時代になると庶民も教育を求めるようになったんですよね。
庶民の教育、あ、寺子屋ですか?
大当たりです。庶民が日常生活に必要な読み書きや計算などを学びたいと思うようになって、江戸時代には寺子屋が広まっていくんですが、寺子屋は都市部だけでなく、地方の農村にも広がって日本中に広まったそうで、幕末までにはなんと15000の寺子屋ができたそうなんです。

なるほど、教育熱が高い国民性によって江戸時代に庶民にも教育が開かれていったというわけですね。日本の小学校の数は確か2万校くらいあるって聞いたことがあるのですが、寺子屋が15000あったとは、もうこの時期に今と同じような規模の教育施設があったということですね。
そうなんです。明治時代になって全国に学校をつくるときに、わずか3年で今と同じくらいの2万校の小学校がつくられたのですが、こんなに早く整備できたのはまさにこの寺子屋のおかげらしいです。
3年で2万校の小学校を設立は確かにすごいスピードですね。
そして寺子屋のおかげで国民全体の基礎学力も上がって、江戸時代の日本の識字率は6割を超えていたそうです。当時のイギリスやフランスの識字率が3割未満だったのに比べると、国際的に見ても日本人の基礎学力がこの時期からかなり高水準だったのがわかります。
本当ですね、識字率がヨーロッパの倍だったってことですよね。なるほど。
アメリカに住んでいるとやっぱり勉強に対する感覚が日本と少し違う感じがするのでこうやって歴史から見てみると日本の教育熱心、特に勉強に熱心なところがどうやって育まれてきたかがわかって面白いですね。
そうですね。私は日本で教育を受けてきて、二人の子どもを今アメリカで子育てしてるんですが、アメリカでの子育ての経験から感じることは、アメリカも日本も教育熱心だとは思いますが、日本の方がはるかに勉強熱心の傾向は強い感じはしますね。それは特に大学受験の時に感じます。
私も子育てをアメリカでして大学生の子どものいるので、その感覚わかる感じがします。アメリカでは大学の受験とかでも勉強だけでなくスポーツとかリーダーシップとかボランティアとかそういう活動もすごく重要視してますよね。
日本の大学の入試は大学や学部によって違いますし、最近AO入試形式を採用する大学も増えてきていてだいぶ変わってきていると聞きますが、やっぱり日本は勉強のレベルをみる筆記試験だけで合格か不合格かをきめる形式が一般的なように思います。なので日本では受験のために塾に通うのは結構当たり前ですが、アメリカでは塾に通う子が非常に少ないというのもそれを象徴してるのかなと思います。
なるほど、確かに塾ってあまりないかもれませんね。
チュータリングセンターなんかが塾のようなものだと思いますが、アメリカではSATとかの大学入試のためでもそういった塾のようなところにいく子は1割か2割くらいしかいなくて、対して日本は小学校では半分くらい中高になると7〜8割位の子が塾に通ってるとのことなので、勉強にかける熱意がアメリカと日本では大きな差があるなぁと感じます。
あと日本と違うなと感じるのは、アメリカはやっぱり個人の自由や独立性を重視する価値観があるので、学校での教育システムもそういったところを反映している気がします。

例えば、学校の時間割も中学あたりからすでに、子どもたちの学力や興味によってその子の合ったクラス編成ができたり、また学校に行かないで家で教育していくホームスクールのシステムも充実してるっていうのもそういったアメリカの個人主義から派生している教育スタイルだなぁと感じます。
ホームスクール!私の周りでもうちの子どもが小学校の時はホームスクールの子が結構いらっしゃったので、それまで私の中では学校にいくのが当たり前という感覚があったので驚いたのを思い出します。
同感です。友達のお母さんでとても教育熱心な方がいらっしゃって、娘さんがすごくよくできて学校の授業では物足りないからと小学校の途中からホームスクールにして、小学校の時から娘さんが興味の持ってたシェークスピアとかのクラスをオンラインとらせてあげたりしてたのを聞いて、え〜なにそれ?とちょっと日本にはない感じでびっくりしたのを覚えています。で、友達のお母さんはお医者さんで働きにも出ていたので、どうやってホームスクールなんかできるの?と聞いたら、ホームスクールはホームスクール用に教科書がしっかりあって、ホームスクールを始めるときに子ども一緒にカリキュラムを立てて、そのカリキュラムを子どもたちが自分のペースで進めていって、学期ごとに学力テストとかもちゃんとあったりしてお母さんはその進捗状況をチェックしていけばいいとのことでした。

ホームスクールの子たちはずっと家にいるのかと思ったら、ホームスクールの子たちで集まって課外活動をする時間もしっかりあったりして、そういった社会性を育むための体制もしっかりしてるのもいいところですよね。
そう思います。アメリカのホームスクールは、学校に行きたくないとか行けないからしょうがないからホームスクールをする、ではなくて、この子のこの時期には学校よりホームスクールのが合ってるからホームスクール、というもっとポジティブな選択で、そして、いつからでも普通の学校に戻ったりもできるので、実際に中学とか高校からは学校に行く子も多くて、私がその時持っていた「みんなが学校に行くもの」という考え方自体がそうじゃないんだ、と個を大事にするアメリカの文化に触れた感じがしました。
で、あともう一つアメリカの教育を見てて日本と大きく違うなぁと思うのは、アメリカは基礎より実践を重視しているなぁという点です。
基礎より実践ですか?
例えばの例なんですが、うちの子が5才の時に初めて野球のクラブに入ったんですけど、みんなすごく下手なんですけど、数回キャッチボールの日があって、すぐそのあとに試合するんです。こちらからすると、え〜キャッチボールもろくすっぽできなくてもう試合!?って感じなんです。

あ、なんかすごくわかる気がします。ちょっと学んだらすぐじゃぁそれを使ってやってみようという感じ。そこから学ぶものっていっぱいありますよね。
授業の内容も、アメリカでは基礎よりも実践の方に重きをおいていて、日本だととにかく反復して基礎を固めようとする傾向があるのに対して、アメリカだとさらっと基礎をやって、じゃこれを使って考えてみよう系の問題が多くて、アメリカと日本の算数の教科書なんかを見くらべても、アメリカの方は圧倒的に基礎の問題が少ないように思います。
あ〜スポーツも勉強も「基礎よりも実践」のその延長線上にあるってことですね。わかります。
こういった傾向もアメリカの個人主義の延長かもしれないんですが、その他にもアメリカは人口が多いから基礎を叩き込まなくても、生まれつき才能があるような上の層の子を集めて強化練習させれば強い集団を作れる、けれどもアメリカの半分の人口の日本は、基礎を叩き込んで全体の底上げをすることが大事で、基礎を叩き込むのが国家的戦略として効果的なのかなって思ったりもします。これは私の持論なんですけど。
なるほど、それはおもしろい意見ですね。
もう一つこれもアメリカにきてから私が感じたことなんですが、日本人の勤勉でコツコツと反復して努力できるところも基礎を学ぶ勉強に向いてるのかなぁという感じもします。
例えば漢字はコツコツ勉強しないとできないものの象徴だと思うんですよね。英語はアルファベット25個を覚えれば意味がわからなくてもとりあえず文が読めるようになりますが、日本語は漢字を覚えないと、しかも小学校レベルでも最低漢字1000個以上覚えないと文を読むことができないんですよ。しかも漢字って音読みも訓読みも両方覚えて、同じ読み方の漢字もたくさんあって、書き順も覚えなくちゃいけない。うちの子どもたちはアメリカで生まれて小学校のときに日本人用の補習校に土曜日に通わせたんですが、その時に改めて漢字の複雑さを実感したんですが、例えば、下という漢字ってありますよね
上下(うえした)の下ですか?
そうですそうです、その下なんですが、上下の「げ」とも読むし、「しも」とも「もと」とも「か」とも読むし、さがる、くだる、おろす、とも読ませるんですよね。そしてそれを全部暗記しなくちゃいけない。子どもに教えながら、え〜ちょっと読ませすぎ、無理がないかなぁ!??ってそのとき思っちゃいました。
なんかわかります、うちの子も補習校通わせましたけど、漢字に苦労しました。確かに漢字は読み方の例外も多くて一個一個繰り返してコツコツと覚えないとだめですね。
勤勉に勉強ができる日本人だからこういった漢字が習得できるのかな〜と思います。それか、こういった漢字を習得しなくちゃいけないから勤勉になったのか。ニワトリが先か卵か先か、みたいな話ですが。実際漢字の輸入元の中国は漢字を簡略化して簡素化しちゃってるじゃないですか。
確かに、中国は書きやすく覚えやすくするために、今は簡体字を使って各数を少なくしてますよね。日本が使ってる漢字はもう使われてないって聞きますよね。
日本は伝統的な各数の多い漢字を使い続けて、さらに日本語に適応させるように訓読みを入れて漢字の使い方が中国より数段複雑化してるのに日本の識字率はほぼ100%なんですよね、本当にすごいと思います。
公文のようなひたすら反復することができるのも日本人ならではなのかもしれませんよね。
確かに、公文は日本っぽい感じがしますよね。うちの息子が行きたがってちょっと通いましたが、あの繰り返しができたら、基礎力は完璧につくと思います。そしてあの繰り返しができるのもまた一つの才能だと思います。
ほんと、繰り返しや反復を飽きずに続けるのって難しいですよね。ちょっと日本人であることを誇りに思います。
日本は実践力が乏しいっていう批判を聞くこともありますが、基礎をしっかり学んで習得するから、落ちこぼれ率が少ないという大きな利点があると思います。さっきのPISAの国際学力テストで日本の数学の落ちこぼれ率は約1割だったんですね。フランス、ドイツ、アメリカの落ちこぼれ率は約3割なので、これは日本の教育の誇るべきところだと私は思っています。
なるほど、日本とアメリカの教育文化には違いがたくさんありますが、その違いが、国民性の違いから派生してきているのかもしれないという考察がとてもおもしろいなぁと思いました。もっと日本とアメリカの違いの話を聞いていたいところですが、少し時間も迫ってきましたので、最後に今回の主題でもあるSDGsと教育について戻りたいと思いますが、
そうですね、すいません、ついつい熱くなってしまってSDGsからだいぶ話がそれてしまいましたね。
いえいえ面白い話題なので私の方も聞き入ってしまいました。
SDGsの評価では日本の教育はどうなんでしょうか?
SDGsではまず学校の就学率や学力が測られているので日本は就学率も高く、PISAの学力テストでも総合3位だったので、高い評価を得ています。そして教育における男女の格差も小さく、性別による教育の機会の違いも少ないところもポイントが高いところです。
なるほど、では逆にSDGsでポイントが低いところはどこなんでしょうか。
地域や家庭環境による教育格差が開いていることや落ちこぼれ率が少し上がったことが挙げられます。でも前よりポイントが下がってもフランスやアメリカよりはだいぶいい状態といえます。
あとは、障がいを持つ子どもたちやLGBTQの子どもたちなどの多様性が十分に受け入れられてないのでインクルーシブ教育を推進したり、いじめや自殺などの精神的なサポートが不足しているところも課題だと言われています。
なるほど、これはSDGsの10番目の平等な社会の分野とSDGsの3番目の健康と福祉の分野にも関連している大事な課題でもありますね。
そうだと思います。
今日はSDGsの4番目の目標「質の高い教育をみんなに」についてお話しいただきました。歴史的な視点からや、アメリカとの比較からといろいろな角度から日本の教育についてお話が聞けてとても興味深かったです。
ありがとうございます。
さて、今回で今年の放送は最後になります。今年は気候変動や貧困、プラスチック問題、食品ロス問題や住み続けられるまち、そして教育についてと合計6回出演していただきお話をしていただきました。本当にありがとうございました。
あっという間の一年でしたね、本当こちらこそどうもありがとうございました。
もしお聞き逃しした回がありましたらアーカイブからポッドキャストでぜひお聞きください。リスナーの皆様も、来年もよろしくお願い致します。ではさようなら。
さようなら。
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